東法連ニュース
第2017年(平成29年)3月号 第373号
相続税対策をテーマに税務研修会を開催
税制委員会、会員、一般150人が参加
東法連は2月8日、新宿・京王プラザホテルで第3回税務研修会(事業・資産承継セミナー)を開催した。当日は、各単位会から税制委員、会員、一般の方々など合わせて150人が参加した。
講師は税理士法人チェスター代表、公認会計士・税理士の荒巻善宏氏で、演題は、第1部「企業オーナーのための相続税対策」、第2部「平成29年度税制改正の行方(資産税関係)」である。
講演内容は次のとおりである。
◆税制改正により相続税課税対象者が広がった
税制改正により相続税課税対象者が広がっている。東京国税局管内における課税対象相続人の数は、27年には約3万2千人となり、対前年比1.7倍になった。
実際の相続税を確認してみると、相続財産が5億円で子供1人の場合、改正前は1億7,300万円で、改正後は1億9,000万円になり、1,700万円の増税となった。なお、子供2人の場合、改正後の相続税は1億5,210万円である。つまり子供が一人増えると3,790万円の節税になる。そのため、養子縁組を活用した相続税の節税対策も増えている。
◆まず検討すべきは後継者の選定 親族内継承は少数派に
事業承継でまず検討すべきことは後継者の選定である。最近では親族内承継は少数派になっている。実際、35年以上前には親族内承継が92.7%だったが、最近5年間では、34.3%にまで下がっている。
後継者がいない場合の解決策の一つとして、M&Aがあり、中小企業のニーズが増加している。近年、小規模案件を手掛けるM&Aの民間仲介業者が散見されはじめ、M&Aのハードルは徐々に低くなってきている。
◆持ち株会社などの節税対策は税制改正のリスクに注意
自社株式の相続税評価が高いままだと、実際の相続発生時に高い税負担がかかる。そのため評価引き下げ対策などが行われることがある。また、相続税や贈与税の節税方法は「計画性のある退職金の支給」、「換金性のある生命保険への加入」、「持ち株会社方式の活用」など多種多様である。しかし、持ち株会社などを活用した節税対策は、注意が必要である。税制は毎年変化しており、改正のリスクがあることを認識しておく必要がある。
◆相続税の納税猶予制度利用企業急増 上手な活用を
相続税の納税猶予制度については、平成27年の税制改正で、要件が緩和され利用する企業が急増しており、平成26年では年間利用件数が197件であったが、27年には429件に増えている。後継者が親族外でも可能になり、この特例を適用した後5年間の要件も、雇用の8割以上継続から、平均で8割以上に緩和された。
この特例のネックは、適用後5年間の要件が一つでも満たさなくなった場合、猶予されていた税額に加え利子税というペナルティが加算されることだ。しかし、これについても、平成29年度改正で、納税猶予が打ち切られた際に、相続時精算課税制度が選択適用できることになった。
そのほか、「タワーマンションの固定資産評価」、「所得税の配偶者控除、配偶者特別控除」の見直しなど、平成29年度改正の説明があった。