税務最新情報

2025年09月10日号 (第551)

税制改正の流れと新しい税制について

 みなさん、こんにちは。令和8年度の税制改正の要望が提出され始めています。例年、12月に税制改正大綱が公表され、3月に法律が成立するという流れです。

 今回は、税制改正の流れと、実際に新しい税を構築する際に考慮すべき点について見ていきましょう。

税制改正の流れ

 例年、税制改正要望は、各省庁や様々な団体から8月ごろに提出されます。要望は多岐にわたりますが、これらすべてが税制改正に繋がるわけではありません。しかし、税制の一定の方向性を把握する上でのヒントになります。

 参考までに、経済産業省と全国法人会連合会の要望書は下記のとおりです。

https://www.meti.go.jp/main/zeisei/zeisei_fy2026/zeisei_r/index.html

https://hojinkai.zenkokuhojinkai.or.jp/hamamatsuhigashi/files/2025/05/9.税制改正要望事項.pdf

 税制改正を議論する際には、主に二つの組織が関わります。一つは内閣府の政府税制調査会で、中長期的な視点から税制を検討します。もう一つは、与党税制調査会です。こちらが税制改正要望を審議し、「与党税制改正大綱」を取りまとめます。

 閣議決定されることで、この大綱は正式な「税制改正の大綱」となりますが、内容は実質的に同じです。通常は12月に閣議決定が行われます。

 この大綱に基づき、1月に改正法律案が作成され、2月に国会に提出・審議されます。そして、3月末に国会を通過し、4月1日から施行されるという流れです。

「走行距離税」は実現するのか?

 ガソリンの暫定税率廃止に伴う代替財源として、「走行距離税」の議論が浮上しています。新しい税制を導入する際に考慮すべき点を、この走行距離税を例に検討してみましょう。

 まず、代替財源として機能するかどうかが重要です。これは税率を調整することで実現可能です。

 次に、走行距離をどうやって計測するかという問題があります。車の走行距離計を利用する場合、自己申告制にするか、車検時に確認するかといった課題が生じます。車検時に計測する場合、新車のように車検までの期間が長いと、課税が先送りになるというデメリットがあります。

 さらに別の側面として、電気自動車の普及でガソリン税収が減少する中、走行距離税への期待が高まる一方で、温暖化防止の観点から低燃費車や電気自動車への移行という時代の流れに逆行するのではないか、という意見もあります。

 

 ここまで書くためにあれこれと調べていたところ、走行距離税の議論は、ガソリンの暫定税率廃止が持ち上がったことで急に始まったものではなく、令和4年頃から政府税制調査会で検討されていました。GPSを用いた走行距離の把握なども議論されており、将来的にすべての自動車が電気自動車になる方向性を踏まえ、長期的な視点からガソリン税の次の税制として検討されていたのです。税制は、数年先を見越して考えられているのですね。

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