税務最新情報

2025年05月01日号 (第538)

納税猶予制度

 4月23日付、国税庁のサイトで「昨今の経済情勢の変化などの影響により納税が困難な方には納税猶予制度があります」との情報が公表されました。タイミング的に「トランプ大統領の関税の影響を考慮したのかな?」という感想ですが、今回は税金が払えない場合の対応についてご紹介していきます。

https://www.nta.go.jp/topics/pdf/0025004-089.pdf

税金が払えない!

 法人税は、利益に対して一定率が課税される仕組みなので、単純に考えると払えないということはないと思われるかもしれませんが、黒字でも法人税を支払うことに苦労するケースがあります。例えば、設備投資をした場合や多額の在庫を抱えるような場合、支出は伴うものの、未償却部分や在庫部分は費用処理されないので、利益にカウントされます。つまり、お金がないのに利益が計上されてしまうというパターンです。資本金が十分に用意できている場合や内部留保が十分ある場合は良いのですが、設立まもない時期は、儲かっているのに税金が払えないというケースになりがちです。

 また根本的に赤字になってしまうと、お金が不足する状態になります。消費税導入以前は、赤字であればかかる税金は地方税の均等割くらいで、赤字で「税金」と言う問題は生じにくい状態でした。しかし最近は、赤字で消費税の滞納という事例は日常的に起こっています。さらにインボイス制度の導入で、スタートアップ企業がインボイス登録をすることで、黒字化するまでの期間の資金繰りについて苦労が増しているように感じます。

税金を滞納するとどうなるのか?

 よくクライアントから、「税金を払わないとどうなるの?」と質問を受けます。個別に事情は異なってくると思いますが、納付期限から概ね1か月くらいすると税務署から督促状が届きます。ちなみに、昨年から法人税の中間納付の納付書が送付されなくなった影響で、中間納付を失念し、督促状が届いたという話は何件かありました。この督促状が届いた段階で納税ができれば、延滞税は生じますが問題は解決します。

 しかし失念ではなく、お金がなくて納税できていない場合が問題です。その後何度か督促状が届き電話がかかってきますが、放置しておくと差し押えを受けることになります。ちなみに、お金がなくて税金を払えない場合は、年金事務所や市町村から差し押えを受けるケースも多く、税務署にだけ対応すればよいというわけではありません。

 一般論とすれば、預金の差し押えから始まりますが、差し押えされると預金が引き出せなくなり、仕入れ代金や人件費を支払うこともできず、事業そのものが継続できなくなる危険性があります。事業継続のためには差し押えをされないように行動する必要があります。

どうしても払えない場合は納税猶予を検討

 根本的な資金不足で、滞納税金を一度に払える目途が立たない場合は、納税猶予制度を活用しましょう。差し押えを免れることができ、延滞税が低く抑えられます。ちなみに令和6年の場合、本来8.7%の延滞税が0.9%となりますので、すぐに税金が払えない場合は、必ず利用するくらいのつもりでよいと思います。また税務署だけではなく、年金事務所や都道府県、市町村などへの滞納がある場合も、個別に連絡をして、差し押さえにならないような対応が必要です。

 なお、納税猶予の際には資金繰り表を作っていくなど、払う意思はあるがすぐには払えないことを丁寧に説明することが重要です。納税者側は精神的にきついので、余裕がない状態になりがちです。「感情的」に払えないことを主張するのではなく、払えない事情を説明することが大切です。また計画通りに払えない場合も、事前に連絡をして、一部だけでも納税をしたり、事情を説明に行くなどの対応が望ましいです。

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