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2025年01月10日号 (第527)
令和7年度税制改正大綱の全体像
新しい年を迎えました。今年は暦の関係で、まとまった休日を取れている人が多いのではないでしょうか。
年明けと言うことで、令和7年度税制改正大綱の全体像について、ご紹介していきます。
今年の大綱の雰囲気
30年ぶりの少数与党という状況での税制改正大綱公表は、「103万円の壁」や「ガソリン税の暫定税率の廃止」など野党の要望を取り入れる形となり、基礎控除の改正、ガソリンの値段への影響などは、一般の人にはインパクトのある税制改正となっています。
一方、税理士などの間では、今年の改正は内容が薄いなどの声があがっています。少数与党で国会の審議を行うことを考慮すると、多くの論点を盛り込むことができなかったことが想像されます。
とりわけ興味深いのは、税制大綱の中で自由民主党、公明党、国民民主党で、下記の合意がなされたとの記載がある点です。
一、いわゆる「103 万円の壁」は、国民民主党の主張する178 万円を目指して、来年から引き上げる。 一、いわゆる「ガソリンの暫定税率」は、廃止する。 上記の各項目の具体的な実施方法等については、引き続き関係者間で誠実に協議を進める。 |
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基礎控除と給与所得控除の合計については178万円を「目指す」としつつ、大綱の中では123万円までしか引き上がっていません。また、ガソリン税の暫定税率は「廃止する」としているものの、直接的な記載は基本的な考え方の部分だけで、令和7年度税制改正の具体的内容部分には全く記載が見つからず、いつから実施なのかについては見えてきません。
基礎控除の拡大の効果と影響
令和7年度税制改正の目玉は、103万円の壁を破ることです。実際に基礎控除を10万円アップして58万円、給与所得控除を10万円アップして65万円、合計して123万円まで控除枠が拡大しました。
この効果だけ考慮すると、所得税率が5%の人にとって見れば、1万円の減税効果に過ぎません。昨年の定額減税の3万円と比較すると、大きな話題となっている割には、影響が少ないようにも見えます。しかし、所得税率が20%の人にとっては4万円の減税効果となり、人によって影響に差異が生じます。
また基礎控除を大きくしたことに合わせ、扶養家族の所得の制限なども同じように引き上げられ、さらに大学生がアルバイトをした場合、収入が103万円を超えることでの逆転現象が解消されるなど、改正点が複合して絡み合うことで、思いのほか大きな効果も期待できます。
地味な法人税関係の改正
法人税関係の改正は、ほとんどないと言っても過言ではありません。個人的によかったと思うのは、中小企業者に対する800万円までの軽減税率が維持されたことです。リーマンショックを受け、平成22年度税制改正で時限立法として導入された経緯を考慮すると、廃止される不安は期限切れの際に常にあります。一方、中小企業の経営環境を考えると、必要不可欠な制度と思えます。
また法人税関係で影響がありそうなのは、防衛特別法人税の創設です。税額控除適用前の法人税額から、基礎控除500万円を控除した額の4%で計算されます。法人税が500万円以下の場合には実質、税負担が生じないことになり、多くの中小企業に直ちに影響があるわけではありません。また税率についても、法人税額の4%なので、法人税率23.2%に4%を乗じて0.928%で、極端に高い税率ではありません。
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