税務最新情報
2024年11月11日号 (第522)
来年の税制改正は面白いかもしれない?
みなさん、こんにちは。衆議院選挙が終わり、与野党が逆転した状態です。新たな連立の形になるのか、パーシャル連合的な動きになるのか、本記事を書いている段階では不明です。税制改正に関しては「想定されていない何か」が起こるかもしれません。今回は、野党が公約に掲げていた税制について、実務目線で書いてみます。
基礎控除の引上げ
税制以外の公約で、与党も含め全ての政党が最低賃金1,500円を目指すとしていました。ところが年末が近づくと、年収を103万円以内とするために、仕事を休むパートの方が増えるという現実があります。そのような問題を解決する意味でも、可処分所得を増やすという意味でも、基礎控除の引上げは重要だと思います。
ただし所得税と住民税の問題だけでなく、社会保険料の130万円の壁、会社で支給される扶養手当等の仕組みなど、税金だけの問題ではありません。さらに税制面では、配偶者特別控除などにより、壁を超えたことで急に不利益にならないよう一定の金額の控除が受けられるのですが、一筋縄ではいかない部分もあります。
高所得者のメリットが大きいなどの逆進性が問題にされますが、現時点で高所得者の基礎控除が逓減していく仕組みがあり、所得が2,500万円超の人は基礎控除がゼロとなります。仕組をうまく作れば、逆進性の問題は解決できると思います。
トリガー条項の発動
ガソリン税を一時的に引下げるトリガー条項の発動は、経済的には一定の効果が見込まれます。ガソリン価格については、自動車を利用する人や会社に影響が大きいだけでなく、物流の価格に影響するので経済全体へ波及する問題です。しかし円安や戦争など外的な要因があるため、いつまで一時的な施策を続ければよいのかという問題が残ります。
消費税減税
選挙のたびに消費税減税を掲げる政党が出現します。消費税は導入当初、消費税率が3%で、広く薄く課税して直間比率を是正することを目標としていました。導入から35年経過し、変化することはやむを得ないのですが、税率10%となり、経済界からはさらなる引上げの声も聞こえてきている現状です。
消費税の問題を消費者一般の視点で考えれば、増税は可処分所得の減少に直結します。一方で減税は可処分所得を増やすことで、消費が増え景気も良くなるという流れが考えられます。事業者向けの視点で見ると、価格転嫁が可能な場合、消費税増税については肯定的な意見が多く、一方で、価格転嫁が難しい中小零細事業者は、消費税減税への思いが強くなります。価格転嫁ができない事業者の場合は、消費税増税は利益率の圧縮になります。また赤字となった場合でも納税が生ずるという部分は、心理的な抵抗が生じます。
消費税減税を実施する場合、財源まで考えると、元々が直間比率の是正として導入されているので、所得税や法人税の負担を増やすことを前提とすれば、帳尻を合わせることは可能だと考えられます。ただし所得税や法人税を増やすと言われれば、多くの人が反対するでしょう。
減税の話は、有権者には耳障りが良いのですが、常に財源の問題がつきまといます。基礎控除の引上げは、仕組み次第で一定の所得層の可処分所得を増やし、高所得者には追加の負担を生じさせるなど、財源の問題をクリアしつつ実現可能なようにも思えます。いずれにしても、来年の税制改正は大きな動きがありそうな気配となりました。
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