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2024年09月02日号 (第515)

相続に関して気を付けること

 みなさん、こんにちは。東京は雷雨の被害がひどいですね。浸水被害や、落雷の影響で電話やインターネットが利用できないなどの被害が、クライアントでありました。インターネットが使えないと仕事に大きな支障がでますので、無線など他の回線や手段を確保しておき、いざというときの対応を考えておいた方がよいかもしれません。

 さて今回は、相続で困った事例の紹介です。

持分を共有させる問題点

 相続の際、不動産を兄弟が共有で半分ずつ相続するケースがよくあります。遺産分割協議を行う際に、どちらか一方が不動産の全部を受け取るより、不動産を2分の1ずつ、預貯金も2分の1ずつと分割する方が、相続税の納税資金まで考慮すると、何かとスムーズだからです。また遺言書で、兄弟に半分ずつ共有で相続させるとしているケースも見受けられます。

 実務的な感覚では、共有する段階では問題となりにくいのですが、20年、30年経過することで大きな問題となるケースが生じます。懇意にさせていただいている弁護士に言わせると、共有は問題の先送りで、夫婦間での共有はあり得るが、兄弟姉妹などでの共有は避けるべきとのことです。

 なぜ問題になるのかと言えば、時間が経過することで、共有者それぞれが別の家庭を持ち、代替わりしていくことで、共有者の数が増え、その関係性が希薄かつ疎遠になっていきます。不動産を売却する場合、一般論としては共有者が同意しなければ買い手がつきませんし、その際に共有者の調整が難しくなります。

 なお、共有不動産を買い取るなどのDMをみかけることがありますが、そのような取引は時価の半額程度で売却金額が提示されることが多く、最初の売り主にとって有利に働くことはありません。その後、共有物分割の訴訟などを経て、残りの共有者が時価で買い取るか、競売に移行するか、あるいは代償金を受け取って出ていくなど、残りの共有者にとっても不利に働くケースが一般的です。親族間での調整が不可能な場合の奥の手と考えるべきです。

前妻(夫)の子がいるケース

 相続税の申告をするに当たり、戸籍謄本を集めると、前妻の子がいると判明することがあります。民法上は、前妻の子であっても現在の配偶者の子であっても相続分は同じです。

 相続税の申告でも、相続登記をする場合に遺言書がなければ、遺産分割協議書が必要になります。遺産分割協議書は、連絡が途絶えている場合でも前妻の子に納得してもらい、実印を押印してもらう必要が生じます。前妻の子に遺産の全体像を見せたくないという気持は理解できますが、中途半端に隠そうとすると不信感が生じて、遺産分割協議がまとまらないなどのケースが生じます。誠実で丁寧な対応が必要となります。

 疎遠になった前妻の子がいる場合は、弁護士などに相談して、遺留分を侵害しない形で公正証書遺言などを作成しておくことで、住宅や会社で利用している土地、会社の株式などを、後継者にスムーズに相続させることが可能となります。遺言書を作成することを億劫にされる方が多いですが、複雑な相続となることが予想できる場合は、相続人に大きな負担をかけることになりますので注意が必要です。

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