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2024年07月10日号 (第510)

イベントチケットを割引購入、あるいはプレミア付きで購入した場合のインボイス処理

 みなさん、こんにちは。相変わらず猛暑です。今年は梅雨も曖昧な雰囲気で、日本の四季という気候そのものが変化しているのだと感じさせられます。

 さて今回も、インボイスに関して国税庁が追加で公表したもので、イベントチケットのインボイスと、実際の購入金額と相違する場合の取扱いです。

イベントチケットの購入価格と適格請求書の金額が異なる場合

 令和6年5月30日追加された国税庁のQ&Aで、次のような問が追加されました。

 当社は、福利厚生としてイベントのチケット(物品切手等)を購入し、従業員に配付しています。仕入税額控除の適用を受けるため、実際に従業員がイベントを観覧した時(引換給付の際)に交付を受けた適格請求書等を受領し、当社においてそれを保存しているところ、その適格請求書等に記載された金額と、物品切手等を購入した金額に差額が生じることがありますが、この場合、どのように仕入控除税額を算出することになるのでしょうか。

 イベントを観覧した時にインボイスを受領するという事例が、直接的に思いつかないのですが、チケットの半券に金額の記載があるようなケースかもしれません。実際に前売りチケットを割引価格で購入できる場合もあれば、金券ショップでプレミアムが付いた金額で購入する可能性も考えられます。

割引価格で購入した場合の処理

 国税庁Q&Aの事例の数字を利用しますが、チケット11,000円で購入し、チケットの半券に本体価格12,000円、消費税1,200円と記載されているようなケースを想定してください。半券が簡易インボイスの要件を満たしているとした場合の処理です。

①インボイスに合わせた処理

購入時貯蔵品    11,000円  現金  11,000円
チケット利用時福利厚生費  12,000円  貯蔵品 11,000円
仮払消費税等  1,200円   雑収入  2,200円(対象外)

②購入金額に合わせた処理

購入時貯蔵品    11,000円  現金  11,000円
チケット利用時福利厚生費  10,000円  貯蔵品 11,000円
仮払消費税等  1,000円

 国税庁の解説によれば、①のインボイスに合わせた処理を正解としつつも、②の購入金額に合わせた処理を行っても差し支えないとのことです。インボイス制度の趣旨からすれば、インボイスに合わせた形で税額控除を受けるのが理論的です。②については、理論的には誤った処理ですが、インボイスよりも低い価額の税額控除となるので容認するということのようです。納税者有利に処理するなら①の仕訳で処理するべきです。

プレミアムが付いたチケットを購入した場合の処理

 こちらの事例では先ほどと金額が入れ替わって、購入金額が13,200円の場合、インボイスに記載された金額は本体価格10,000円、消費税1,000円となっており、割増価格で購入している事例です。

購入時貯蔵品    13,200円  現金  13,200円
チケット利用時福利厚生費  10,000円  貯蔵品 13,200円
仮払消費税等  1,000円
福利厚生費   2,200円(対象外)

 仕入税額控除が可能となるのは、あくまでもインボイスに記載のある1,000円までとする処理です。例外を認めていません。

 

 チケット購入時点でインボイスが交付されれば、このような問題は起きません。しかしチケット販売時点では、物品切手等の販売で非課税となるため、インボイス制度の下において、別のタイミングでインボイスが交付されることによって生じる疑問点です。

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