税務最新情報

2024年04月01日号 (第500)

半年経過したインボイスの実務

 みなさん、こんにちは。4月になりました。インボイス制度が施行されてから半年になります。制度導入後も国税庁は「お問合せの多いご質問」を毎月のように更新しており、最新版は3月18日更新のものとなっています。

 今回は、3月18日更新版を例に実務上の問題点をご紹介していきます。

12月15日公表分の問17(予約サイトを利用した場合のインボイス)

 インボイス制度が導入された当初、インターネットの大手予約サイトを通じてホテルを予約した場合、ホテルでインボイスが交付されないという問題が生じました。ホテルが明らかに登録事業者であるという前提です。予約サイト側も、インボイスは交付できないとの対応だったそうです。これに対するQ&Aの回答で、重要な部分は下記のとおりです。

(注) 予約サイトの運営者が適格請求書発行事業者ではないなどの理由により、媒介者交付特例を適用できない場合に、課税事業者である顧客から適格請求書の交付を求められた際は、委託者においては、適格請求書の交付義務が生じることとなります。

 この回答は、媒介者交付特例は委託者と受託者ともに課税事業者の場合に利用できる前提を覆す内容でした。理論的に考えれば、ホテル側は本来の受託者である予約サイトにインボイスを交付、予約サイトが登録事業者でなければ、予約サイトからの購入者はインボイスを受け取れないのが法律的な仕組みです。

 このQ&Aが公表され数か月経過しましたが、税務雑誌の記事によると実際にホテルを利用した際、インボイスが交付されないという事例が多く残っているようです。理論的に考えれば、ホテル側はインボイスを二重に交付すべきではないですし、まっとうな対応にもみえます。現場ではいまだに混乱しているようです。

3月18日公表分の問25タクシーチケット利用の場合

 クレジット会社が発行しているタクシーチケットについては、手元にインボイスが残りません。この点について、国税庁は下記のような取扱いを認めています。

 しかしながら、ご質問のようにタクシーチケットは取引先等に手交されることも多いことを踏まえれば、適格簡易請求書の保存が困難といった事情があると考えられます。そのため、受領したクレジットカード利用明細書及び以下の資料に記載された内容等に基づき、利用されたタクシー事業者が適格請求書発行事業者であることが確認できる場合には、適格簡易請求書の記載事項(取引年月日を除きます。)が記載されている証票が使用の際に回収される取引として、帳簿のみの保存により仕入税額控除の適用を受けることとして差し支えありません(回収特例)。

 結論から言えば、インボイスがなくてもタクシー会社が登録事業者と確認できれば、帳簿の記載のみでOKとするものです。古物商特例、宅建業特例などは、法律に根拠を有しますが、Q&Aで登場した回収特例は、法律の根拠はありません。納税者に有利な弾力的な取扱いですから、争いは生じないと思われますが、どこまで例外が認められるのかその範囲が気になるところです。

 

 普段は領収書に登録番号のスタンプを押したものや、登録番号が手書きされたものを交付している事業者において、時々登録番号の記載がないなど、登録事業者宛の支払いにもかかわらず、インボイスに不備があるケースが目につきます。また電子書籍、電話料金などの公共料金、ETCの利用、ネットでのアプリの購入、その他の継続的な自動引き落としによる支払いなど、相手が適格事業者であることは明らかなのに、その都度インボイスが交付されていない取引は数えきれないほどあります。部分的な例外を五月雨的にQ&Aで認めていくのではなく、登録事業者への課税仕入れである事実が認められる場合は仕入税額控除を認めるなど、法改正による抜本的な解決が必要なのではないかと感じます。

記事提供
メールでのお問い合わせの際は、必ず住所、氏名、電話番号を明記してください。

過去の記事一覧

ページの先頭へ