税務最新情報

2024年02月13日号 (第495)

令和6年度税制改正大綱 法人税②

 みなさん、こんにちは。所得税の確定申告の期限まで1か月と少しです。最近、マイナンバーカードを作った際に従来の利用者識別番号を廃止して、新たに利用者識別番号を取得されている方を見かけます。利用者識別番号を新たに作成された場合、確定申告を電子申告で行う際に必要な情報となりますので、必ずメモを残しておきましょう。

 さて今回は、令和6年度税制改正大綱の中から、賃上げ税制についてご紹介していきます。

複雑化する賃上げ税制

 賃上げ税制のベースとなっているのは、平成25年度税制改正で創設された「所得拡大促進税制」です。当初は、中小企業以外の企業向け(大企業向け)と中小企業向けの2階建ての仕組みでした。その後、大企業向けについては「賃上げ・生産性向上のための税制」と仕組みを変え、さらに、令和3年からは「人材確保等促進税制」に仕組みを変更しています。

 令和4年からは、大企業向けと中小企業向けのいずれも「賃上げ促進税制」という名称に変更され、現行の実務で走っている仕組みとなりました。

 令和6年度税制改正では、従来2階建てだった仕組みに、新たに中堅企業向けというカテゴリーを設け、3階建ての税制とします。税制では、中小法人という言葉と中小企業者という言葉を微妙に使い分けるのですが、細かな話はさておき、資本金1億円以下で大企業の子会社などに該当しない場合を指します。一方で、従来のカテゴリーの大企業と言った場合は、資本金1億円超であれば該当しますので、従業員が数十人の法人も、従業員が数千人規模の法人も、同じ制度が適用されてしまいます。そこで、資本金が1億円超でも従業員数が2,000人以下である企業を、中堅企業と言う新たなカテゴリーに分類することで、きめ細かく賃上げ税制が利用できるように改正を行いました。

大企業向けルール

 税額控除率を継続雇用者給与総額の増加率に応じて控除率を変動させたうえで、教育訓練費の増加率や女性活躍・子育て支援の実施により、税額控除率が上乗せされます。

継続雇用者給与総額控除率教育訓練費10%超女性活躍・子育て支援
3%以上10%



上乗せ5%




上乗せ5%
4%以上15%
5%以上20%
7%以上25%

※女性活躍支援はプラチナえるぼし、子育て支援はプラチナくるみんが要件

中堅企業向けルール

 継続雇用者給与総額の増加率に応じて、次のような控除率となります。ただしその法人と支配関係がある法人を合わせて、常時使用する従業員数が10,000人を超える法人は、大企業向けルールの適用になります。

継続雇用者給与総額控除率教育訓練費10%超女性活躍・子育て支援
3%以上10%
上乗せ5%

上乗せ5%
4%以上20%

※女性活躍支援はえるぼし3段階目以上、子育て支援はプラチナくるみんが要件

中小企業向けルール

 中小企業向けの制度については次の通りで、控除限度額が5年間繰越が可能となります。ちなみに、継続雇用者給与総額ではなく、単純に雇用者給与総額の比較となっており、計算自体は手間をかけずに行えます。

雇用者給与総額控除率教育訓練費10%超女性活躍・子育て支援
1.5%以上15%
上乗せ5%

上乗せ5%
2.5%以上30%

※女性活躍支援は2段階目以上、子育て支援はくるみん認定が要件

 

 上記のカテゴリーごとに要件が順次緩和されていますが、中堅企業向け税制を適用可能な企業が大企業向けの税制を適用した方が、控除率が大きくなるような場合は、大企業向けの税制を利用することが可能です。

 いずれも、令和6年4月1日以後開始する各事業年度に適用されます。

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