税務最新情報

2023年10月20日号 (第484)

税制改正に向けた動き

 みなさん、こんにちは。例年12月に税制改正大綱が公表されますが、それに先立って、税制改正に向けた情報が出始めています。詳細は大綱が公表されるまで不明ですが、どのような影響があるかについて検討していきます。

外形標準課税の新たな基準

 地方税の外形標準課税の適用対象は、現在、資本金が1億円を超えるか否かが基準とされています。日経新聞の記事によると、10月12日の総務省の有識者会議で、新たな指標として「資本金と資本剰余金の合計額」と、税法上の「資本金等の額」のいずれかを採用する方針で一致したとのことです。

 新聞の記事からだけでは①資本金と資本剰余金の合計額、②税法上の資本金等の額について、どちらか一方なのか、①と②の併用なのか読み取りにくいですが、かなり大きな影響を与えそうです。

 外形標準課税は、黒字企業にとって極端に大きな影響を与えませんが、赤字企業やベンチャー企業などには非常に負担の重い制度です。そのため、減資により外形標準課税の対象とならないような対応をしていたケースもあります。今回の改正で、外形標準課税の適用にならないよう対策した企業が、再び外形標準課税の対象に含まれてしまうなどの影響がありそうです。減資に関しては、株主総会の招集などそれなりにコストが発生するので、最近対策した企業には頭が痛い話です。

法人税と所得税は減税?

 自民党の世耕幹事長が10月3日の記者会見で、法人税と所得税の減税に言及しました。法人税減税については設備投資に絡む減税、所得税減税については手取り額を増やす方向性と報道されています。

 法人税については設備投資に絡むということですから、投資促進税制の拡充ということで予測が容易です。現在、設備投資を計画している状況であれば、現行の制度では対象とならない資産でも、税制改正によって投資促進税制の対象資産に含まれる可能性があるので、税制改正大綱の情報を待ちたいところです。

 一方で、所得税についての手取り額を増やす方策は、所得控除を増加させる、あるいは新たな税額控除を設けるなどの方法が考えられます。ここ数年の傾向としては、給与所得控除の上限額を小さくしつつ、配偶者控除に所得制限を設けるなど、所得が高い層については増税傾向で推移してきています。これを踏まえると、平均的な水準以下の層への減税が予測されます。ただし低所得の場合、そもそも所得税が課税されていないケースも多く、税制では手取りを増やすのは難しいかもしれません。またそれなりに所得がある場合でも、子育て世代であれば、住宅ローン減税と扶養控除の適用で所得税が課税されていないケースもありますので、税制での対応には限界があるかもしれません。所得に応じて給付を行うなどの方が、効果は高いのかもしれません。

 

 消費税については、将来的には税率を上げるかもしれませんが、現状はインボイス方式を定着させることが優先課題です。経過措置の延長などはあるかもしれませんが、大きな改正はしにくいかもしれません。

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