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2023年09月11日号 (第480)

インボイスを可能な限り簡単に解説 3

 みなさん、こんにちは。インボイス制度のスタートまで約20日です。テレビCMやインターネットの情報を見ていると、すごく大きな変化が起きそうに見えます。また岸田総理が、閣僚級の「インボイス制度円滑実施推進会議」を立ち上げるとの報道がでています。

 今回は、経理実務にどの程度影響を与えるのかご紹介していきます。

経理実務で増える仕事

 インボイス制度導入後、経理実務で増える仕事について質問されることがよくあります。

 あくまでも消費税の課税事業者で、原則課税が適用になる事業者限定ですが、追加される仕事としては、仕入・経費などの入力の際、登録事業者であるか否かを明らかにする必要があります。私が利用している会計ソフトであれば、入力の際に「適格請求書有」か否か、のチェックを入れるだけです。本当に、たったそれだけです。

 よくある勘違いとして、登録番号の入力が必要とか、インボイスがない場合は経費にしてはいけないとか、怪情報が流れています。インボイスがなくても経費になります。また、登録番号をその都度入力しなければいけないというルールもありませんし、帳簿に記載しなければいけないというルールもありません。

実際の経理フローとしては何も変わらないし手間も増えません

 経理の作業を行う際、請求書や領収書を見ながらの入力作業、通帳をみながらの入力作業が一般的です。請求書や領収書については、発行元がインボイスの登録事業者であれば登録番号が記載されているはずですから、登録番号の記載があれば、「適格請求書有」とのチェックを入れればokです。

 通帳の記帳をベースに入力する自動引き落としの場合は、契約書に基づく振込など、請求書に基づかいない支払いがあります。この場合、支払先がインボイスの登録事業者であるか否か、確認する必要があります。自動引き落としや家賃のように、契約書に基づく振込の場合、「契約書」+「登録番号の通知」+「通帳の記載」を合わせてインボイスと認めてくれるとのことですから、一度支払先にインボイスの登録事業者か否かを確認して、登録事業者であれば「適格請求書有」とのチェックを入れればよいことになります。なお登録事業者の確認は、書面に限らずメールなどでも問題はありません。

 現実問題として、通帳からの支払いは継続的な取引先に対するものが大部分ですから、いったん登録事業者かどうか確認してしまえば、その後は同じ取引先であれば「適格請求書有」として入力をしていくことになります。請求書や領収書からの入力は、元々入力の際に登録番号の有無を確認しながら入力できますから、実務的には、それほど手間が増えるわけではありません。ただし、通帳の記帳内容から入力をしている継続取引先については、決算時に登録事業者の状態が継続しているかを確認しておくのがよいと思います。

 一方、経理担当者がインボイスについて気にせず「適格請求書有」と入力されてしまうと、消費税額が正しく計算されなくなるので、実害が発生してしまいます。

経理担当者が実務をする上で知っておきたいこと

 入力作業が極端に増えるわけではないですが、経理担当者の知識として必要になるのが「インボイスが不要な取引」です。

 例えば自動販売機からの購入、3万円未満の公共交通機関による旅費、従業員に支払われる出張旅費・通勤費、郵便切手を対価とする郵便料金などです。これらは、そもそもインボイスが発行されないものですが、帳簿のみの記載で仕入税額控除が受けられることになっているので、内容が明らかになる程度に入力が必要となります。

 また古物商や宅建業など、特定の業種に対する特例もあるので、該当業種の場合は、その存在を知っておく必要があります。

 

 結局のところ、経理実務としては大きく手間が増えるわけではありません。ただし、一定のルールに従った処理をしないと消費税の計算が正しくおこなえないので、必要最低限の部分については、税理士に相談するなどして確認しておきましょう。

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