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2023年09月01日号 (第479)

インボイスを可能な限り簡単に解説 2

 みなさん、こんにちは。久しぶりに夏の甲子園を真剣に見てしまいました。丸刈りではない野球部が優勝したのは、新しい時代を切り開くようなイメージで斬新でした。一方で、炎天下の試合はどうにかならないのかなと思ってしまいました。

 前回はインボイスを発行する側の話でしたが、今回は受け取る側がどんな影響を受けるのか、について解説していきます。

受け取るインボイスの影響

 最近、テレビやインターネット、タクシーのCMでも、インボイスの話題ばかりです。どのくらい大きな影響があるのでしょうか。

 まず根本的な話として、一般的な消費者に対しては、まったく影響がありません。例えば、夕食の材料をスーパーで購入する際、インボイスを受け取る必要があるのかという問い合わせがありました。受け取る必要はありませんし、スーパー側も一般消費者に対してインボイスを交付する義務はありません。

 インボイスの影響を受けるのは事業者限定です。さらに言うならば、事業者でも消費税の免税事業者であれば、インボイスの発行、インボイスの保存も無関係です。

 消費税の課税事業者であっても、簡易課税を選択している場合には、インボイスの発行こそしなければなりませんが、消費税の計算には、受け取ったインボイスは全く関係してきません。

 結論として、課税事業者で原則課税を利用している場合、受け取ったインボイスの保存が必要ということになります。

 ただしインボイス以前に事業者であれば、法人税や所得税の計算で、必要経費にするための経費関係の領収書や請求書は、消費税と無関係に保存が必要です。結局のところ、インボイス制度があっても無くても、請求書や領収書の保存は必要ですから、何も変わらないと思った方がよいでしょう。

受け取ったインボイスが消費税の計算に与える影響

 消費税の課税事業者で原則課税を採用している場合、同じ経費の支払いがあった際、インボイスの交付を受けた場合とインボイスでない領収書では、どのくらい影響があるのかをご紹介します。経過措置があるので、時期によって計算結果が変わってきます。

110万円の外注費を支払った場合の影響額
①インボイスを受け取った場合の控除税額
110万円×(10/110)=10万円
②令和5年10月から令和8年9月まで(経過措置で80%の税額控除が可能)
110万円×(10/110)×80%=8万円・・・・・2万円不利になる
③令和8年10月から令和11年9月まで(経過措置で50%の税額控除が可能)
110万円×(10/110)×50%=5万円・・・・・5万円不利になる
④令和11年10月以降(経過措置終了)
110万円×(10/110)×0%=10万円・・・・・10万円不利になる

 インボイスの交付を受けられない外注費が年間で110万円だった場合、経過措置があるうちは、年間で2万円の影響から始まり、経過措置終了で年間10万円の影響となります。仮に、インボイスの交付を受けられない外注費トータルが1,100万円の規模なら、経過措置終了後は年間で100万円程度不利になってしまいます。

 

 ただし、インボイスの交付を受けられない経費関係がどのくらいあるかは、会社によって全く状況が変わります。経費を見直した場合、ほとんど免税事業者への支払いがないと想定されるケースもありますし、私の事務所で試算すると、経過措置終了後に年間で2~30万円は不利になるかなということで、影響がないわけではありませんでした。一方で、主要な仕入先や、外注先が免税事業者の場合、さらに影響が大きくなりますから、会社ごとに対応が異なってきます。

 

 これからは、漠然と不利になるかもしれないということではなく、具体的な数字を出してみるのがよいと思います。ほとんど影響がない場合もありますし、それなりに対応が必要な場合も考えられます。

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