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2023年08月10日号 (第477)

電子帳簿保存法とインボイス対応の情報が錯綜

 みなさん、こんにちは。もうすぐお盆です。帰省される方や夏休みをとられる方も多いと思います。花火大会の様子などを見るに、今年はとても混雑しそうですが、やっと季節に合わせた人の動きが戻りそうな雰囲気です。

 さて今回は、クライアントから問い合わせの多い内容です。「電子帳簿保存法やインボイス方式に備えて、複合機、レジ、会計ソフトなどをリニューアルする必要があるのか」という疑問です。

電子帳簿保存法とインボイスをきっかけにした営業

 最近、複数のクライアントから「電子帳簿保存法に備えて会計ソフトや複合機の営業電話がかかってくるのですが、今のままでは対応できないのでしょうか」との質問があります。またインボイス制度導入に備え、レジの営業や経費精算システムの営業などもあるようです。

 営業する側が正しい知識で、丁寧に説明してくれるのであれば誤解は生じませんが、煽るような営業もあるらしく、会計ソフトを変更しなければいけないとか、複合機を変更しなければならないと誤認させているケースもあります。

 今回は複合機、会計ソフト、レジなどの買い替えが本当に必要なのかという視点でご説明していきます。

電子帳簿保存法については三つの制度

 電子帳簿保存法は①会計帳簿に関する電子化、②スキャナ保存、③電子取引の保存方法と、三つの制度から構成されています。そして①と②については任意です。強制ではなく、事業者が採用したければ採用できるというもので、慌てる必要はありません。

 ①の会計帳簿に関する電子化であれば、一般的な会計ソフトを利用していれば対応可能です。

 ②のスキャナ保存ついては、書類を紙で保存することに替えて、電子データとして保存する場合に必要となります。この場合、読み取るためのスキャナ(複合機等)が必要であり、スキャンしたデータを保存するためのクラウドサービスも必要となります。また、すでに書類を電子データ化して利用しているケースでも、法的な要件を満たすためにはスキャンしたデータについて、タイムスタンプを付すかクラウドサービスの利用が必要となります。

 スキャナ保存についてはすぐに行う必然性はないものの、保存スペースの問題、保存したデータへのアクセスの容易さなど、利便性が高いのでメリットがあります。

 ③の電子取引については、特別な機器を購入するのではなく、社内での運用について規程を設けることで対応可能です。また、令和5年度改正で「電子データを保存しておけば、すべての書面をプリントアウトするなど従来の対応でも実務上は問題とならない」とされました。

インボイス対応

 インボイス対応については、インボイスの発行という側面と、インボイス制度に対応した会計処理という二つの側面があります。

 インボイスの登録事業者となる場合、インボイスを発行するための準備が必要です。従来のレジや請求書発行システムで対応できる場合もあります。対応できない場合は、レジや請求書発行システムの変更が必要です。ただし、手書きのインボイスがNGというわけではないので、一律に必要ということではなく、必要に応じての対応が必要です。多くのケースでは、請求書やレシートに登録番号を記載できれば、そのままインボイスの要件を満たすことになりますが、対顧客との関係で必要になる事項なので配慮が必要です。なお、インボイスの登録事業者とならない場合には、一切関係がない話です。

 インボイス制度に対応した会計処理は、税理士事務所などに会計処理を依頼している場合、それほど影響ないかもしれません。一方、会社で会計ソフトに入力している場合、インボイス制度対応のものにバージョンアップすることが望ましいです。具体的には、インボイス制度に対応していない会計ソフトでは、原則課税による消費税の計算が正しく行えなくなります。なお、簡易課税を利用している場合、インボイス制度に対応したソフトでなくても消費税の計算は正しく行えます。

 

 テレビCM、ネット広告、ダイレクトメール、営業電話を含め、電子帳簿保存法の話とインボイス制度の話が錯綜し、情報が氾濫している傾向があります。会社にとって本当に必要な部分について、冷静な検討が必要です。

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