税務最新情報

2023年07月20日号 (第475)

査察と税務調査

 みなさん、こんにちは。SNS上で、ユーチューバーに査察が入ったとして、話題になっています。今回は、査察と税務調査についてご紹介していきます。

査察とは

 かなり昔のことですが「マルサの女」という映画がヒットして、査察という言葉が一般的に知られるようになりました。一般の方との会話で、普通に税務調査が入っても「査察が来た」と話されるケースがあるので、税務調査と混同して認識している場合があるようです。

 法律的に税務調査は、国税通則法74条の2に規定する質問検査権に基づく「任意」の調査です。一方で査察は、以前は「国税犯則取締法」という別の法律で定められていましたが、平成29年度税制改正により平成30年4月からは国税犯則取締法は廃止され、国税通則法に編入されました。現在は国税通則法の131条以下に規定され、132条では下記の規定となっています。

 当該職員は、犯則事件を調査するため必要があるときは、その所属官署の所在地を管轄する地方裁判所又は簡易裁判所の裁判官があらかじめ発する許可状により、臨検、犯則嫌疑者等の身体、物件若しくは住居その他の場所の捜索、証拠物若しくは没収すべき物件と思料するものの差押え又は記録命令付差押え(電磁的記録を保管する者その他電磁的記録を利用する権限を有する者に命じて必要な電磁的記録を記録媒体に記録させ、又は印刷させた上、当該記録媒体を差し押さえることをいう。以下同じ。) をすることができる。ただし、参考人の身体、物件又は住居その他の場所については、差し押さえるべき物件の存在を認めるに足りる状況のある場合に限り、捜索をすることができる。

 任意調査との違いは、税務職員は、臨検・捜索・差押えができるとされており、「強制的」な調査と位置付けられます。

どんなときに調査が来る?

 国税庁が公表している2021年度の「査察の概要」によると、査察に着手した件数は116件とのことです。一方、国税庁が公表している「法人税等の調査事績の概要」によれば、法人税等の実地調査件数は2021年度で41,000件とされています。

 普通の税務調査に比べ、査察の件数は非常に少ないのですが、一罰百戒の効果を意図していることから、まず第一に、大型の脱税が疑われる案件に着手となります。それ以外には、無申告や課税漏れが多い業種を選定して重点的に着手するとか、著名人など影響力が大きいところをターゲットにするなどが考えられます。

 一般の税務調査に関して、私が調査官から直接聞いた調査のきっかけとしては、①売上が増加しているのに在庫が減少している(一般的な財務分析から見た矛盾点)、②赤字が続いていて社長借入が増加し続けている(その資金がどこから来るのかという疑問点)、③新しい制度(最近だと消費税の居住用賃貸建物)について、正しい適用がされているかの確認などのケースがありました。さらに一定規模の法人については、定期的に税務調査が来るようなケースもありますし、規模が小さくても飲食店などの現金商売も調査に選定されることが多いような気がします。

 

 査察自体、多くの人にとって直接関わることは少ないと思いますが、税務調査は事業を始めると日常的なものです。普通に税務調査が来ただけで「査察に来られた」などと言ってしまうと、誤解を招きますので気をつけましょう。

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