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2023年06月12日号 (第471)

信託型ストックオプションの取扱いで混乱?

 みなさん、こんにちは。クライアント訪問時以外は、マスクを外しています。暑い日がちらほらとあり、マスクをしない生活の快適さが身に沁みます。コロナの間、経済的な問題も大きかったですが、真夏にもマスクをするのは負担でした。

 さて今回は、信託型ストックオプションが新聞報道などで話題になっているので、ストックオプションについて、簡単にご紹介していきます。

ストックオプションとは

 ストックオプションとは、「あらかじめ定められた金額で、株式を購入できる権利」のことをいいます。従業員や役員に付与する形で利用されます。

 具体的な事例として、一株の時価が5万円の時、一株6万円で株式を購入できる権利を付与します。この一株6万円で株式を購入できる権利を「ストックオプション」と呼びます。

 5年後に一株の時価が10万円になっていたとしても、一株6万円で株式を購入できるので、ストックオプションを保有している人は、時価が6万円より上昇している場合、権利を行使して株式を有利に取得出来ます。一方で業績が上がらず、株価が6万円を下回っているなら、権利行使しなければよいのです。

課税の仕組み

 上記の例で、一株の時価10万円の時、ストックオプションを権利行使すると、一株6万円で株式を取得できます。その後、時価が12万円になった時、株式を売却すると想定してください。

 この場合、権利行使した時に時価10万円の株式を6万円で購入できているので、4万円の利益が発生していると考えられ、その後、売却時にさらに2万円の利益が生じると考えることができます。

 これについて、税法上の要件を満たす適格ストックオプションか、税法上の要件を満たさない非適格ストックオプションかによって、下記のとおり課税関係が変わります。

権利行使時株式売却時
適格ストップオプション課税なし6万円に課税(分離課税)
非適格ストックオプション4万円に課税(総合課税)2万円に課税(分離課税)

 適格ストックオプションの場合、権利行使時に課税がないことに加え、株式売却時に全体が有価証券の売却扱いで、分離課税となります。一方、非適格の場合は、権利行使時に給与として総合課税となります。事例では4万円の利益ですが、実際には数百万円から数千万円の利益となりますから、総合課税になるか分離課税になるかで、税率が倍以上変わってくるケースがあります。

有償ストックオプション

 税制適格ストックオプションは無償で付与されますが、有償ストックオプションと呼ばれるストックオプションを、有償で購入するケースも存在します。この場合、ストックオプションを適正な時価で購入していれば、権利行使時に課税はないと整理されています。

信託型ストックオプション

 今回、日経新聞で大きく取り上げられたこと、上場企業を含む800社以上で利用されていたことで影響が大きいため、税務業界では信託型ストックオプションに非常に注目が集まっています。大きくクローズアップされたのは日経新聞の記事が公表されてからですが、今年の3月の国会答弁で、信託型ストックオプションについては、権利行使時に課税するとの課税当局側の見解なども公表されており、根が深い問題です。

 

 信託型ストックオプションの是非については、実務の世界では疑問視する意見もありました。一方で実務的に多少不安があったとしても、「上場企業も含め多くの会社で導入されている」などと説明されることで、採用してしまったケースもあると思います。すでに信託型ストックオプションを導入している会社は、課税当局の見解に合わせ、過去に遡って処理を改めるか、あるいは訴訟などで争う姿勢をみせるか、企業側の対応も気になるところです。

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