税務最新情報

2023年05月22日号 (第469)

ETCのインボイス対応

 みなさん、こんにちは。寒暖差が激しい時期です。季節の変わり目は体調を崩しやすいので気を付けましょう。

 今回は、実務で問い合わせが多いETCに関するインボイスの対応です。

カードの利用明細はインボイスにならない

 クレジットカード会社がビジネス対応を前面に出しているクレジットカードであっても、カード会社が発行する利用明細は領収書の代わりになりません。

https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shohi/18/05.htm

 ところが、実務ではカードの利用明細があれば、領収書が保存されていない場合でも問題にならないケースがあります。これは消費税法で、税込みの支払額が3万円未満の場合には、請求書等(領収書)の保存がなくても、法定事項が記載された帳簿の保存のみで仕入税額控除ができるという特例が存在するからです。

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6496.htm

 3万円以上の取引などで、カード会社から送付された利用明細は残っているけれど、領収書が保存されていないという理由で、仕入税額控除を認めないケースは生じます。実務で問題にならないケースの多くは、金額的に3万円未満のケースか、利用明細以外に請求書や領収書などが保存されている場合です。

 ここまでが現行の取扱いですが、10月以降インボイス制度が導入された後も、カードの利用明細はインボイスには該当しません。

ETC問題

 インボイス制度の導入に向けて、クライアントからよく質問を受けるのは、「ETCの利用料について領収書が発行されないのでどうしたらよいか」というものです。確かに、高速道路を利用する際にETCを利用している場合、現金の支払いもしませんし、領収書の授受も行われません。支払いはクレジットカードで、クレジットカードの利用明細が届くまで、利用した側も金額を正確に把握していない場合が多いのではないでしょうか。

 この点については、高速道路事業者は既に解決済みとしてアナウンスも行われています。結論からすると、金額が確定した段階でETC利用照会サービスから利用証明書を発行する形で対応することになります。

https://corp.w-nexco.co.jp/newly/r4/1227/

 インボイス制度が導入されてしばらくの間は、カードの利用明細があれば、利用証明書がないことでいきなり否認されることはないかもしれません。過去の改正などでも、当面の期間は弾力的な運用がされてきました。

 

 例えば高齢の納税者の場合、カードの利用明細を保存することは容易でも、ネットにアクセスして必要なものを印字することはハードルが高いという問題が生じます。実務をしていると、パソコンが苦手または、一切利用しない納税者も一定割合存在します。ETCに限らず、携帯電話料金も紙の請求書が不要な場合は割引するなど、紙の発行を減らす傾向があります。同じ経済活動をしているのなら、税負担も同じになるべきですが、パソコンの利用が苦手な場合に不利になるのでは、制度として中立性に欠ける側面があります。

 

 令和5年度税制改正で、中小事業者向けの少額特例(1万円未満)制度が創設されましたが、本音としては、従来の少額特例(3万円未満)をすべての事業者に適用する方が、弊害がないように感じます。

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