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2023年05月12日号 (第468)

退職金課税の概要と改正の可能性

 みなさん、こんにちは。ゴールデンウイークが終わりました。マスコミなどの報道を見ている限り、多くの人出があったようです。

 さて今回は、新聞などで報道されている、退職金の課税制度の改正についてご紹介していきます。

岸田首相が退職金課税の優遇について見直し?

 令和5年4月12日に「新しい資本主義実現会議」で、労働市場改革の論点案をまとめたと報道されました。「新しい資本主義実現会議」の議長は岸田首相ですから、税制改正大綱のような確定的な話ではないものの、今後の税制改正への影響はそれなりにあるはずです。

 そして退職金に関する部分は、現行の退職金制度は勤続20年を超えると、退職所得控除額が増加される仕組みとなっており、その制度が労働移動の円滑化を阻害しているとの指摘を受けたとの報道です。

 中小企業でも、10年先、20年先の役員退職を見据えて準備をしているので、退職金課税の仕組みに変更があると大きな影響を受けてしまいます。

現行の退職金課税の仕組み

 退職金課税を簡単に説明すると、①退職所得控除という控除額があり、②控除後の金額を2分の1にするというルールがあり、③他の所得と合算せず分離課税が適用される仕組みとなっています。

 退職所得控除については、下記の通りとなります。

 勤続年数(=A)

 退職所得控除

20年以下

 40万円×A(80万円に満たない場合には、80万円)

20年超

 800万円 + 70万円 × (A - 20年)

 退職金の額から、上記で計算した控除額を控除した残額を2分の1して、所得税と住民税が課税される仕組みです。税率については、控除した残額に対応する税額表で算出しますが、普通の所得税の税額表を用います。

 今回報道で問題になったのは、20年超で1年あたりの控除額が増加することですが、個人的には、2分の1にする部分の影響が大きいような気がします。このあたりは、「労働移動」という課題を中心に考えるか、課税の仕組みで考えるかの差なのだと思います。

実務上の問題点

 退職金の議論の中で、役員退職金に関して、実務上よく問題になります。具体的には役員退職金が高額になるのではという金額的な論点、退職の事実が伴うのかという論点などがあります。

 仮に役員の退職金として支給したものが、退職金として認められない場合、①会社側では役員賞与として損金不算入で法人税の追徴、②さらに会社側で源泉徴収の不足額が生じることになり、③個人では退職所得ではなく給与所得となり、退職所得控除がなくなり、税率も変更になります。俗にトリプルパンチ課税などと言われており、金額が大きな場合は、非常に大きなリスクとなります。

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