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2023年04月20日号 (第466)

令和5年度税制改正 研究開発費税制の見直し

 みなさん、こんにちは。ゴールデンウイークが近づいています。3月決算の法人は多くありますが、今が一番忙しい時期ですね。ゴールデンウイーク返上で決算業務をされているケースもよく見受けられますが、取引先が休業になっていて連絡がとれないなど、不都合が生じるケースがあります。計画的に決算を進めていきましょう。

 さて今回は、令和5年度税制改正における研究開発費税制の見直しについてです。

研究開発費税制とは

 研究開発費税制とは、企業の研究開発を促進するために試験研究費の額に一定の控除率を定め、税額控除を認める制度です。制度としては50年以上継続しており、様々な改正を経ながら現在の制度となっています。

 令和2年度実績では8,668社が利用しているそうですが、経済産業省の調査によると、令和3年6月時点で企業数が367万社余りとのことですから、0.2%程度の利用割合となっています。私も実務を30年以上行っていますが、利用している会社は非常に少なく、それほど利用されていない制度といえます。

研究開発費税制の枠組み(現行の制度)

 基本的な制度としては、中小企業基盤強化税制という中小企業向けの制度と、中小企業以外向けの制度と2本立てになっています。

①基本的な部分として、試験研究費が増加した場合、最大で法人税額の25%までが税額控除可能となっています。なおコロナ前に比較して売り上げ減少にも関わらず、試験研究費を増額しているなどの要件を満たす場合は、控除上限額を5%上乗せして法人税額の30%まで税額控除が可能となります。

②上乗せの特例として、試験研究費割合が10%超の場合、最大で法人税額の10%までの税額控除を上乗せする仕組みとなっています。なお中小企業基盤税制では、試験研究費割合に替えて、増減試験研究費割合が9.4%超の場合でも上乗せが可能となります。

 ①、②を適用できる場合において試験研究費に控除率を乗じた上限額は、法人税額の40%までとなります。

③さらにオープンイノベーション型に該当する場合は、法人税額の10%分の税額控除を上乗せできます。なおオープンイノベーション型は、提携先に応じて控除率が決まります。

 研究開発費税制は、2本立ての税制が3階層になっているため、わかりにくく感じます。

令和5年度税制改正の内容

 一般試験研究費の額にかかる税額控除制度については、控除率の下限を2%から1%に引き下げ、上限を10%から14%に引き上げ、適用期限は3年間延長されます。

 試験研究費の額が平均売上金額の10%を超える場合、税額控除率の特例及び控除税額の上乗せの特例の適用期限は3年間延長されます。

 中小企業技術基盤強化税制については、要件である増減試験研究費割合が9.4%超から12%超に引き上げられます。税額控除率の12%に増減試験研究費割合から12%を控除した割合に0.375を乗じた割合を加算します。試験研究費割合が10%超の場合の上乗せ措置については従来通りです。

 オープンイノベーション型の場合は、①対象となる特別試験研究費の額に、特別新事業開拓事業者との共同研究、及び特別新事業開拓事業者への委託研究に係る試験研究費の額を加えられます。税額控除率は25%とされます。②対象となる特別試験研究費の額には、一定の要件を満たす新規高度研究業務従事者に対する人件費を含めることができます。税額控除率は20%とされます。③対象となる特別試験研究費の範囲から、研究開発型ベンチャー企業との共同研究、及び研究開発型ベンチャー企業への委託研究に係る試験研究費が除外されます。

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