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2023年03月20日号 (第463)
令和5年度税制改正 所得税(極めて高い水準の所得に対する負担の適正化)
みなさん、こんにちは。春らしい気候になってきました。暖房を止めると寒いですが、つけると暑いという微妙な雰囲気です。そして花粉が気になり始めました。
今回は令和5年度税制改正において、極めて高い水準の所得に対する負担の適正化という改正項目について、ご紹介していきます。
極めて高い水準の所得に対する負担の適正化
基準所得金額から3億3千万円を控除した金額に22.5%の税率を乗じた金額が、その年分の基準所得税額を超える部分について、所得税を課税する制度が創設されます。
基準所得金額とは、その年分の所得税について申告不要制度を適用しないで計算した合計所得金額です。基準所得税額とは、その年分の基準所得金額に係る所得税の額です。なお、基準所得金額には預貯金からの利子など源泉分離課税の対象となる所得金額及びNISA制度で非課税となる額は含みません。
より具体的には、申告不要制度とは確定申告を要しない配当所得等の特例や、特定口座を利用する場合の確定申告を要しない上場株式等の譲渡による所得などに対する制度です。
なお、本制度は令和7年から適用されることになります。
具体的な事例
上記が大綱を元にした説明ですが、はっきり言ってわかりにくいです。例えば、資産家が上場株式を大量に保有していて、年間10億円の配当を受け取っている場合を事例として説明します。
上場株式の配当だと、国税としては15.315%の税率(この内所得税は15%)が源泉徴収されており、改めての確定申告は不要とされています。なお、実際には地方税が更に5%かかって、合計で20.315%の税率となりますが、税制改正大綱の話は所得税の改正なので、所得税の15%を前提に解説します。
改正前 10億円×15%=1.5億円 改正後 (10億円-3.3億円)×22.5%=1億5,075万円 |
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10億円の所得なら75万円の増税となり、驚くほど少なく感じるかもしれません。ちなみに20億円で計算すると下記のようになります。
改正前 20億円×15%=3億円 改正後 (20億円-3.3億円)×22.5%=3億7,575万円 |
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所得が20億円の場合は、7,575万円の増税となります。
通常の所得税率と株式の譲渡・配当にかかる税率の差
一般の所得税率は超過累進税率となっており、課税される所得金額が4千万円以上の場合は、45%の税率となります。上記の改正を考慮しても、株式の譲渡・配当などの金融所得に係る税負担は優遇されています。
金融所得に対する税率の低さについては不公平感があり、以前から改正が必要との意見がありました。令和5年度の税制改正でメスを入れたことは、意味があるのかもしれません。
ただし、多くの人にとってはあまり影響がない改正ですし、10億円、20億円の配当所得がある人にとっても、それほど痛みを伴わない改正のように思えます。
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