税務最新情報

2023年02月20日号 (第460)

令和5年税制改正 相続時精算課税制度の改正

 みなさん、こんにちは。確定申告の期限まで1か月を切りました。昨年は確定申告期限直前に、e-Taxのサーバトラブルなどがあり、電子申告が繋がりにくい状況になりました。トラブルに巻き込まれない為にも、申告書の作成が完成したら早めの申告を心がけましょう。

従来の相続時精算課税の使いにくさ

 令和5年度の相続時精算課税の改正により、問題点が解決されることになるのですが、従来の相続時精算課税には大きなデメリットがありました。

 遺産総額から相続税がかからないことが予測される場合、相続時精算課税を利用しても大きなデメリットは見当たりません。ところが、相続税の課税が予測される場合は、相続時精算課税を利用した後、暦年贈与で利用できる基礎控除が利用できなくなり、一般的には相続税がかかることが予測される場合には不利になることが多く、相続時精算課税は利用しにくい制度と言われていました。

従来の制度での価格固定効果のメリットとデメリット

 相続時精算課税では、相続税の計算に組み入れられる金額が「贈与時の価格で固定」されることから、大きな値上がりが予測される資産を贈与している場合には、有利に働きます。ところが、事業承継税制などの導入により、同族会社の株式に利用する場面は減少し、不動産などについてもバブル前のような極端な値上がり傾向はなくなり、価格固定のメリットを確実に期待できるケースが少なくなりました。

 一方で、東日本大震災などの災害で、資産価値が大幅に下落するケースもあります。相続時精算課税を利用し資産価値が下落した場合は、価格固定の結果、相続時に財産の価値が低くなっていても、贈与時の高い価格で相続税が計算されてしまうことがデメリットになっていました。

令和5年度税制改正で相続時精算課税の使いやすさが向上

①毎年基礎控除が利用できる

 相続時精算課税を利用した場合でも、贈与により取得した財産に係るその年分の贈与税については、相続時精算課税の基礎控除とは別に、課税価格から基礎控除110万円を控除できることになります。その後、贈与者の死亡の際には、相続税の課税価格に加算される金額については、基礎控除を控除した残額とされます。これにより、暦年贈与の基礎控除が利用できなくなるというデメリットがなくなり、相続税が課税されることが予測される場合でも、暦年贈与に存在する基礎控除が利用できないというデメリットがなくなりました。むしろ相続税対策として、相続時精算課税を組み合わせることがスタンダードになるかもしれません。

②災害により被害を受けた場合に救済

 贈与者から贈与された一定の不動産が、災害等によって被害を受けた場合は、相続税の計算の際に加算される価額は、贈与時の価額から被害を受けた部分に相当する額を控除した残額となります。災害等の偶発的な要因で、価格が下落した場合に救済されることになります。

 この改正は、2024年分の贈与から適用されることになります。来年以降、利用者が急増するかもしれません。

記事提供
メールでのお問い合わせの際は、必ず住所、氏名、電話番号を明記してください。

過去の記事一覧

ページの先頭へ