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2022年11月10日号 (第450)

所得金額調整控除のミスに気を付けましょう

 みなさん、こんにちは。ニュースでは、来年の税制改正についていろいろと漏れ聞こえてくるようになりました。一方で、実務的には年末調整の準備に向けた打ち合わせが多くなる時期です。

 所得金額調整控除は令和2年からできた新しい制度ですが、昨年(令和3年)の年末調整で申告漏れが多かったので、今回ご紹介していきます。

制度の趣旨

 平成30年度税制改正において行われた、給与所得控除額と公的年金控除額の引き下げに対する緩和措置として、所得金額調整控除という制度が導入されました。簡単に言えば、全体としては給与所得控除額や公的年金控除額を縮小して増税が行われたのですが、一定の要件を満たす場合は控除額について追加調整を行うという趣旨です。

 もう少し具体的に言うと、①給与所得者は給与所得控除額上限の引き下げを行ったが、子どもや特別障害者がいる場合には緩和する調整を行う ②給与所得と年金所得が同時にある場合、給与所得控除で10万円引き下げ、公的年金控除で10万円引き下げ、合わせて20万円所得控除が減少するので、その調整を行うという趣旨です。

ミスが多い原因

 令和2年からの新しい制度であるため、制度自体浸透していないことが最大の理由ですが、制度そのものにミスが起きやすい特徴があります。子ども・特別障害者がいる場合の特例と、給与所得と年金所得の両方がある場合の特例を所得控除の調整というカテゴリーで一括りにしているためわかりにくくなっています。

 また子ども・特別障害者がいる場合の特例については、給与収入が850万円を超えている場合に限定されるので、そもそも適用対象者が全体的に少数ということもあります。

 そしてもっとも大きな理由が、ミスがあっても気づきにくい仕組みということです。例えば、世帯主は扶養親族がいれば当然扶養控除等申告書に記載しますし、扶養控除のない年少扶養親族についても記載している方が多いと思います。所得金額調整控除を受けるためには、年末調整の際に「所得金額調整控除申告書」の提出が必要となりますが、令和4年度分であれば「給与所得者の基礎控除申告書給与所得者の配偶者控除等申告書所得金額調整控除申告書」と3つの申告書が一枚の様式になっており、配偶者控除は関係ないからと提出しない人が多いようです。

 年末調整を行う際に、扶養控除等申告書に子どもや特別障害者の家族が記載されていれば、年末調整担当者が上記の申告書の提出漏れに気づき用紙の記入を依頼するなど対応が可能です。しかし扶養控除等申告書にその記載がない場合があります。所得金額調整控除は、給与所得控除の減少にかかる調整であることから、共働きの場合に、一人の子どもに対して、両親がそれぞれ調整を受けることが可能です。ところが、配偶者が扶養控除や特別障害者控除を受けるとの理由で、扶養控除等申告書に子ども・特別障害者の記載をしない場合は、年末調整担当者としても気づきようがありません。

 

 このあたりのミスをなくすためには、「扶養控除等申告書」、「保険料控除申告書」、「基礎控除申告書兼給与所得者の配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書」については、面倒でも裏面の説明を本人が目を通すことが大切です。

 特に昨今では年末調整の電子化が進んでいますが、電子化が進めば進むほど、本人の入力ミスがストレートに年末調整の間違いに直結することになります。電子化は省力化できる反面、ミスには冷酷です。

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