税務最新情報

2022年09月01日号 (第443)

国税庁レポート⑤

 みなさんこんにちは、9月になりました。少しずつ秋めいた気候になり、過ごしやすい日もでてきました。

 さて、今回も国税庁レポートからです。税理士実務をしていても査察、滞納などの案件に出会う可能性は低いので、興味深い情報となります。

査察について

 査察制度は、悪質な脱税者に対して刑事責任を追求し、それにより多くの人に注意を促す一罰百戒の効果を通じて、適正・公平な課税の実現と申告納税制度に資することを目的としているそうです。

 令和3年度は消費税事案、無申告事案、国際事案のほか、時流に即した事案を重点的に取り組んだとのことです。結果として、①海外法人を利用した国際的な不正スキーム事案、②愛玩動物のイベントを企画・開催する法人の消費税事案、③下請け業者から謝礼金を受領した建設会社元従業員の事案などを告発したとのことです。

 より詳しい情報は、下記を御覧ください。

https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2022/sasatsu/r03_sasatsu.pdf

 令和3年度は117件の判決があり、第一審では117件全てが有罪判決となっています。一件あたりの犯則税額は6,400万円と、金額的には極端に大きいわけではありません。マスコミに報道される有名企業の追徴税額はもっと多額なケースもありますが、解釈の違いやミスなどが原因の場合は査察案件ではなく、普通の税務調査案件となります。

 査察については刑事責任が問われる案件であり、大部分の税理士は一生に一度も関係しないのではないでしょうか。

滞納への対応

 令和2年度において、税務署に申告された課税額は72兆円にのぼり、年度内の納付が70兆5千億円であることから、97.9%が収納されていることになります。別の言い方をすれば、2.1%程度が滞納になっていることになります。

 税金を滞納したらどうなるのか、クライアントから聞かれることがあります。実際には、税務署との話し合いで支払い方が決まるので、一律にどうなるというわけではありません。国税庁レポートでは下記のような記載となっています。

 滞納整理に当たっては、まずは自主的な納付を促して納付の意思を確認するとともに、事業や財産・収支の状況など、滞納者個々の実情を十分に把握した上で処理方針を決定します。

 具体的には、滞納者から一括納付は困難との相談があった場合、事情を十分にお聴きした上で納税の猶予や換価の猶予などの適用を検討し、法令の要件に該当する場合は、分割納付を認めるなど適切に対応しています。一方、納付約束の不履行を繰り返すなど、納税に対する誠実な意思が認められない場合には、財産の差押えや公売等の滞納処分を適時・適切に実施することとしています。

 上記から読み取れるのは、事情を説明して支払う意思を見せることで、分割払いなどに応じてもらえるということです。

 ちなみに私の経験では、差押えなどの事例は、国税では破産案件などでしかみかけたことがありません。むしろ、年金事務所や地方税の方が簡単に差押えを実行してくるイメージです。

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