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2022年06月10日号 (第435)

実務目線で見たインボイス制度の問題点5

 みなさん、こんにちは、国会の答弁で岸田総理が消費税は下げませんと、きっぱり言い切っていました。あそこまで断言するところを見ると、選挙後に消費税の税率アップの話が出てくるかもしれないですね。コロナ禍で給付金やワクチンなど多額の支出があったので、その穴埋めが必要と考えられるからです。ただ、物価が高くなっている現在、消費税もアップと言われると中小企業者にとっては試練となりそうです。

インボイスの宛名

 領収書を受け取る際に、会社の名前を正確に記載してもらうケースと、上様、あるいは宛名無しでというケースも実務ではよく見かけます。税務調査の現場では、よほど問題がありそうなケース以外ではそれほど指摘されることはありません。

 さて、インボイス制度になった場合はどうなるでしょうか。インボイスの要件として、下記の記載を必要事項としています。

① 適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号

② 課税資産の譲渡等を行った年月日

③ 課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容(課税資産の譲渡等が軽減対象資産の譲渡等である場合には、資産の内容及び軽減対象資産の譲渡等である旨)

④ 課税資産の譲渡等の税抜価額又は税込価額を税率ごとに区分して合計した金額及び適用税率

⑤ 税率ごとに区分した消費税額等

⑥ 書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称

 上記の⑥で、交付を受ける事業者の氏名又は名称とありますから、宛名がない領収書だと厳密にはインボイスの記載要件を満たしていないことになります。

適格簡易請求書に該当する場合

 適格簡易請求書の場合は、交付を受ける事業者の氏名又は名称は必要ないこととなっています。そして、適格簡易請求書の交付ができる業種は、①小売業、②飲食店業、③写真業、④旅行業、⑤タクシー業、⑥駐車場業、⑦その他これらの事業に準ずる事業で不特定かつ多数の者に資産の譲渡等を行う事業とされています。

 実務的には、小売店での購入、飲食店の飲食代、タクシーの領収書、駐車場の領収書など、多くのケースでは宛名がない場合でも適格簡易請求書ということで、影響はないことが予想されます。宛名がないことが問題ではなく、適格簡易請求書に該当する業種か否かを気にする必要があります。

宛名が従業員の場合

 例えば、出張などの経費精算で領収書の宛名が従業員になっている場合は、どのように扱うかという問題点が生じます。

 この点について、国税庁のQ&Aで、他人宛の適格請求書を受領しても、適格請求書とすることができないとされています。立替金精算書等の交付を受けることで、立替金精算書等と他人宛の適格請求書の保存をもって、保存要件を満たすとされています。

 なお、実費精算ではなく日当形式で支給している場合は、社員に支給する出張旅費、宿泊費、日当等のうち、その旅行に通常必要であると認められるものは、帳簿の記載のみで仕入税額控除が認められます。通勤手当についても、通勤に通常必要と認められる部分の金額については、帳簿の記載のみで仕入税額控除が認められます。

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