税務最新情報
2022年03月10日号 (第426)
常識では理解し難い離婚による財産分与に係る税金
みなさん、こんにちは、確定申告期限まであとわずかです。過去2年申告期限が延長していたせいか、今年はきつい感じです。実際に知り合いの税理士で、コロナで入院された方が今年になって複数いますが、都内で1万人以上感染者がいるのですから、申告期限は延長すべきだったのではと考えてしまいます。昨年より感染者が多い中で、申告期限を延長しないというのは何なのでしょう。
さて、今回も確定申告の話題で、離婚に伴う財産贈与に関する税金の話です。
離婚して財産をもらったとき
離婚に伴い住んでいる家を妻に渡して、夫がでていくというパターンはありがちです。また、家に限らず離婚の際に、相手方から財産をもらうケースはあります。
この場合、もらった財産が家でも、現金でも一般論としては、贈与税がかかりません。理屈の上では、一般的な贈与ではなく、夫婦の財産関係の清算、離婚後の生活保障の財産分与請求権に基づくものと考えられるからです。
ただし、贈与税がかからないことを利用して極端に多すぎる財産を渡した場合は、多すぎる部分に対して贈与税がかかります。
ところが、実務では、どこまでが極端に多すぎる財産なのか、あるいは偽装離婚なのか区別がつきません。よほど極端な場合は、税務署が課税処分をするのかもしれませんが、実際にどこまでが大丈夫なのかと言われると税理士でも判断が難しいです。普通は大丈夫ですとしか答えようがありません。
また、偽装離婚など、贈与税をかからなくするために行われている場合などは、すべての財産に贈与税がかかります。これも、実務をやっている立場からすれば、「その離婚、離婚のふりなんでしょ?」という発想が普段はありえないですし、離婚した相手と再婚するという話は、珍しくない話です。結局、よほどあからさまな場合に税務署が処分をしてくる話であり、日常的にはでてこないケースです。
離婚して家と土地を渡した場合
今度は、離婚して家や土地を元の配偶者に財産分与した側の扱いです。この場合には、分与した人に譲渡所得の課税が行われることになります。分与した時の土地や建物などの時価が譲渡収入となります。
言い方を変えると、財産分与で家や土地を元の配偶者に渡すと、時価で売却したことになり、購入したときが1,000万円、離婚して財産を渡した時の時価が5,000万円になっていれば、大雑把に言えば4000万円の譲渡所得となるわけです。居住用財産であれば、3,000万円控除を受けられるケースがありますが、それでも1,000万円に対して200万円強の税金が、財産を渡した側にかかってしまう仕組みになっています。
読み返された方もいるかも知れませんが、財産を無料で渡した側に、時価で売却したとして税金がかかってしまうのです。不可解と思われるかもしれませんし、常識からは納得できないと思われるでしょう。実際に、税務署を相手に訴訟となり、昭和50年に最高裁判決で、譲渡所得になるとの結論がでています。
平成はじめ、バブルの頃までは、財産分与で課税はありがちでしたが、バブル崩壊後は不動産の下落傾向になることと、居住用財産の3,000万円控除の適用で、課税になるケースは比較的少ないと思います。
そもそも、離婚による財産分与の実務など、私が税理士を25年以上やっていて一度くらいの遭遇ですから、もともとレアな事案です。ただ、実務的には、時価で譲渡と規定されていても、時価はいくらなのか?という問題がでてくるのです。時価と規定することは簡単ですが、現実問題として時価をいくらとするのかの判断は悩ましいです。結果として税金がかからない場合は、それほど気にする必要はありませんが、税金がかかる場合は難しい問題となります。
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