税務最新情報

2021年12月20日号 (第418)

令和4年度税制改正大綱の概要と雑感

 みなさん、こんにちは、今年最後の税務情報です。さて、例年ですが税制改正大綱が公表されたので、その概要のご紹介です。各論は、年明けから順次ご紹介していきますので、見出し的な位置づけと考えてください。

噂された贈与税改正はなく地味な内容

 税制改正大綱が公表される少し前に、暦年贈与の場合の贈与税の非課税枠110万円が利用できなくなるというような情報が週刊誌などに掲載されました。お客さんも一番関心度が高い内容でしたが、今回は具体的な改正はなく、先送りとされました。令和3年度税制改正で手をつける旨記載されていたので、いずれは改正になることが予測されますが、今回も引き続き議論を続けるというような内容で、地ならし期間中ということでしょうか。

 それ以外に大きな改正があったかというと、基本的には時限立法である租税特別措置法の見直し、小幅修正のような内容で小粒の改正でした。税理士法の改正や仮想隠蔽があった場合の取り扱いなどは、新しい内容ですが一般の納税者には、関係がない分野で関心度は低そうです。

 結局はコロナ禍で、増税することもできず、一方で給付金や経済対策、ワクチン接種など国の負担も大きく、減税もできないという身動きできない状況のように思われます。

 ちなみに、今年の大綱で目立った言葉は、ステークホルダーです。平たく言えば、「利害関係者」の意味です。昨年は、デジタルトランスフォーメーションとカーボンニュートラルという言葉が多用されていると感じていたら、ビジネスの世界であっという間に流行語のようになりました。今年は、ステークホルダーという言葉が流行るかもしれません。

所得税関係

①住宅ローン減税の見直し、微妙に枠組みの変化がありますが、目立つのは控除率が1%から0.7%に縮小されます。最近は、住宅ローンの金利が1%を下回ることもあり、融資による逆ザヤが生じていたことへの対応ですが、納税者にとって不利な改正です。

②配当について、大口株主の範囲が変更されます。従来は直接3%保有でしたが支配法人を通じた保有がある場合に合算して判定することになりました。この点については、高額所得者が、関係法人を経由させることで、税率を低くすることができたことへの対応です。一般の人には無関係かもしれませんが、高額所得者へはピンポイントで厳しい改正となります。

資産税関係

①事業承継税制の特例承認計画の提出期限が令和5年3月までとされていたところ、令和6年3月まで1年間延長されます。この辺りは、当初は期限の延長をしないとしていた部分ですが、コロナの影響を受けてやむを得ないのでしょうね。

②財産債務調書の提出範囲が広がりました。従来は所得制限がありましたが、この改正で所得がない人でも財産の価額が10億円を超える人が、従来の提出義務者に加えられることになります。なお、提出期限が3月15日から6月末に延長されます。相続税対策としては必要な改正と思います。

法人税関係

①所得拡大税制が、新規雇用者への支給額の増額だったものが、継続雇用者の給与の増額へ逆戻りしています。もともと、計算が面倒なところを、1年で元の仕組みに戻される運びとなりました。昨年はコロナの影響で雇用調整があったため、継続雇用者の給与比較では利用しにくいと思っての救済的取り扱いだったのかもしれませんが、現場泣かせです。

②主要な事業として行わない貸付けの用に供した資産について、10万円未満の資産の損金算入、一括資産としての損金算入、中小企業向けの少額減価償却資産としての損金算入の制度が利用できなくなります。コインランドリーなどを利用した節税対策の封じ込めを趣旨としており、普通の納税者には、あまり関係ないかもしれません。

 

 ボリュームの問題もあるので、今回はこのくらいにしておきます。引き締めという改正が目立ちます。なお、消費税はすごく大きな改正はなく、インボイス制度に向けた沈黙という雰囲気です。

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