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2021年09月21日号 (第409)

適格請求書を受け取れない場合

 みなさん、こんにちは、いよいよ10月から適格請求書(インボイス)発行事業者の登録が可能となります。すでに、何件かのお客様から問い合わせを頂いている状態ですし、税務雑誌などでもインボイスの話題が豊富です。

 さて、今回は、適格請求書を受け取れない場合について、どうなるのか?そして、例外的な取扱などについてご紹介していきます。

原則的な取扱

 適格請求書保存方式が令和5年10月1日より導入されます。導入後は、仕入税額控除を受けるためには、帳簿への記載適格請求書(インボイス)の保存が必要となります。

 現在は、帳簿への記載請求書等の保存ですから、あまり変化がないようにも思えます。大きく異なるのは、適格請求書発行事業者以外は、適格請求書を発行できず、適格請求書を発行できない事業者からの請求書等では、仕入税額控除が受けられなくなる点です。

 例えば、一人親方、飲食店、個人タクシーなどで、適格請求書を発行しない事業者への支払いがあった場合は、請求書等の保存があったとしても仕入税額控除ができないことになります。企業によっては、適格請求書発行事業者と取引をするようにルールを定めるかもしれませんし、現在免税事業者である事業者も登録するか否かは検討が必要です。

経過措置

 適格請求書保存方式の導入で、適格請求書の保存がない場合に仕入税額控除ができなくなると言われていますが、実際には経過措置が存在し、令和5年10月1日から直ちに、適格請求書の保存がない場合に全く仕入税額控除が認められないわけではありません。

 激変緩和の観点から、令和5年10月から令和8年9月までの3年間は、免税事業者等からの仕入で適格請求書の交付が受けられていない場合であっても80%の仕入税額控除が可能となっています。さらに、令和8年10月から令和11年9月までは50%の仕入税額控除が可能となっており、6年間は一定の部分について仕入税額控除が可能となります。

 実務的な視点からは、免税事業者等からの仕入自体はそれほど金額的に大きくないでしょうから、80%の税額控除が受けられれば、それほど気にならないレベルと思われます。

インボイスの交付が受けにくい事業者

 前回の記事で、自動販売機による販売や、券売機による販売など適格請求書を発行しなくてよいケースをご紹介しました。一方で、そのような適格請求書を発行する義務がない場合に、仕入等を行った際に仕入税額控除が受けられないのかというと、下記の場合には、帳簿の保存のみで、適格請求書がなくても仕入税額控除が可能となっています。

① 適格請求書の交付義務が免除される3万円未満の公共交通機関による旅客の運送

② 適格簡易請求書の記載事項(取引年月日を除きます。)が記載されている入場券等が使用の際に回収される取引(①に該当するものを除きます。)

③ 古物営業を営む者の適格請求書発行事業者でない者からの古物(古物営業を営む者の棚卸資産に該当するものに限ります。)の購入

④ 質屋を営む者の適格請求書発行事業者でない者からの質物(質屋を営む者の棚卸資産に該当するものに限ります。)の取得

⑤ 宅地建物取引業を営む者の適格請求書発行事業者でない者からの建物(宅地建物取引業を営む者の棚卸資産に該当するものに限ります。)の購入

⑥ 適格請求書発行事業者でない者からの再生資源及び再生部品(購入者の棚卸資産に該当するものに限ります。)の購入

⑦ 適格請求書の交付義務が免除される3万円未満の自動販売機及び自動サービス機からの商品の購入等

⑧ 適格請求書の交付義務が免除される郵便切手類のみを対価とする郵便・貨物サービス(郵便ポストに差し出されたものに限ります。)

⑨ 従業員等に支給する通常必要と認められる出張旅費等(出張旅費、宿泊費、日当及び通勤手当)

 上記の①②⑦⑧には、前回ご紹介した適格請求書を発行しなくてよい場合の、仕入側への救済措置です。

 ③④⑤⑥は、中古車販売、中古住宅の販売、古物商、質屋、リサイクル業などは、一般消費者から購入する商品を販売する業種であるため、売上にのみ消費税がかかって、仕入税額控除を認めないのは、消費者間の取引に比べて不利になるなど業界を守るための取扱と考えられます。

 ⑨については、日当形式で旅費を支払う場合や、通勤手当など、従業員が購入して経費精算書で支払いが行われるため適格請求書が存在しないため、それを救済するための措置です。

 適格請求書保存方式が開始すると、適格請求書が必ず必要と思われがちですが、経過措置と帳簿の保存のみで仕入税額控除が認められる取扱については、実務上重要となります。

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