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2021年09月10日号 (第408)

適格請求書保存方式の基本

 みなさん、こんにちは、お客さんの状況を聞いていると、8月はかなりひどい状況だったとよく聞きます。確かに、全国的にコロナが広がっていますし、8月の感染者数は多かったです。ワクチン接種で状況が改善されることを期待していたのですが、先が読めない状況が続きます。

 さて、前回は適格請求書発行事業者として、登録するか否かについてご紹介したところ、適格請求書制度、つまりインボイス制度についてもう少し分かりやすく聞きたいとのご指摘がありました。今回は、もっと基本的なインボイス制度の仕組みについて説明します。

適格請求書の発行に関する義務

 一般的に、インボイス制度の説明として、適格請求書すなわちインボイスがなければ、消費税の計算の際に仕入税額控除が受けられないことと説明されています。一方で、適格請求書を発行する場合には、登録事業者となり、一定の義務を負うことになります。

 適格請求書発行事業者には、取引の相手方からの求めに応じて、適格請求書を交付する義務交付した適格請求書の写しを保存する義務が課されます。

 なお、一定の場合には適格請求書の交付義務が免除されます。具体的には、下記のとおりとなります。

① 公共交通機関による船舶、バス、鉄道などの旅客の運送で3万円未満のものは、適格請求書の発行が免除されます。なぜなら、券売機などで、切符を購入という場合には、通常領収書は発行されませんし、切符などは最終的に回収されることになるのが一般的だからです。

② 出荷者が卸売市場において行う生鮮食料品等の譲渡で、出荷者から委託を受けた受託者が卸売の業務として行うもの。これについては、出荷者が売り主ですが、市場に販売を委託しているため、出荷者がいちいちインボイスを交付することができないためです。

③ 生産者が農業協同組合、漁業協同組合または森林組合等に委託して行う農林水産物の譲渡。これについても、販売者は組合に販売を委託して、組合等は販売者を特定せずに販売を行うため、インボイスの交付ができないからです。

④ 自動販売機により行われる3万円未満の課税資産の譲渡等。自動販売機で、飲み物などを販売する度にインボイスを発行することが現実的ではないためです。

⑤ 郵便切手を対価とする郵便サービス。郵便切手については、販売時には非課税で、郵便という役務の提供が行われたときに課税関係が生じます。郵便の都度、送り主にインボイスを発行することは現実的ではないためです。

適格請求書の記載事項

 適格請求書とは、下記が記載された請求書、納品書などの書類となります。実務上は、請求書に限らず納品書の場合も、領収書の場合なども考えられますが、記載事項を満たすことが重要です。下線部分が、従来の請求書に加えて必要となる項目です。

① 適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号

② 取引年月日

③ 取引内容(軽減税率の対象品目である旨)

④ 税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜き又は税込み)及び適用税率

⑤ 消費税額等(端数処理は一請求書当たり、税率ごとに1回ずつ)

⑥ 書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称

 なお、不特定多数の者に対して販売を行う、小売業、飲食店業、タクシー業等については、適格請求書に代えて、適格簡易請求書を交付することができます。具体的には⑥の宛名の記載が不要となり、④の適用税率か⑤の消費税額いずれかを記載すれば足りる形になります。スーパーマーケットやタクシーなどで、宛名の記載は現実的ではないための措置となります。

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