税務最新情報

2021年03月10日号 (第390)

令和3年度税制改正 納税環境整備

 みなさん、こんにちは、緊急事態宣言が首都圏で2週間延長とのことです。ワクチンの普及でコロナは収束するかもしれませんが、その後を考えると、緊急融資を受けた事業者の倒産のリスク、増税など、なかなか悩ましい状況が予測されます。今も厳しい状況ですが、もっと厳しい状況を予測した舵取りが必要になりそうです。

 さて、今回は、令和3年度税制改正で、納税環境整備について、ご紹介していきます。

◆税務関係書類の押印義務の見直し

 納税者が押印が必要とされてきた税務関係書類について、基本的に押印不要となります。

 一方で、押印が必要なものは、下記の書類となります。

① 担保提供関係書類及び物納手続関係書類で、実印の押印と印鑑証明書の添付を求めている書類 ② 相続税及び贈与税の特例で、財産の分割協議に関する書類

 押印が必要と言っても、上記の実印を押印した書類と印鑑証明書を同時に提出が必要な場合以外は、認印の押印でも何の問題もなく実務は行われていましたし、あらゆる書類に実印の押印が必要とした場合は実務が回らないことになります。非常に現実的な改正であり、有意義な改正で、令和3年度の税制改正の目玉とも言える内容です。

 なお、法律上は令和3年4月1日以後に提出する税務関係書類について適用されるとされていますが、大綱では、それ以前でも、押印を要しないこととする税務関係書類については、運用上、押印がなくても改めて求めないこととしています。つまり、現行実務で、押印は基本的に不要となります。

◆電磁的記録等による保存制度の見直し

 従来の承認制度を廃止して、正規の簿記の原則に従って記録されていれば紙への印刷は不要で、電子データのまま保管することが可能となります。これらをA電子帳簿といいます。

 パソコンなどの会計ソフトを利用している場合でも、従来は帳簿を紙に印刷して保存することが要求されていましたが、データでの保存が認められることになりました。規模の大きい会社であれば1年分の帳簿でも10センチのファイルが何冊にも及ぶことがあり、税務調査のためだけに印刷するような無駄が行われていたと思うと、現実的な改正です。

 令和4年1月1日以後の関係帳簿から適用されます。

 なお、訂正等履歴要件及び相互関連性要件など、従来の要件を満たす優良な電磁的記録等の保存を行う旨の届出を提出することで、過少申告加算税が5%軽減されます。こちらは、B電子帳簿といいます。

 令和4年1月1日以後に申告期限が到来するものから適用されます。

◆スキャナ保存制度

 従来の承認制度を廃止して、要件が大幅に緩和されます。会計システムで訂正削除履歴が残る場合は、タイムスタンプも不要となり、2ヶ月以内に入力することが求められます。

 書類への自署、相互けん制などの適正事務処理要件なども廃止されます。

 適時に会計システムへの入力を行っている会社で、会計システムで訂正・削除履歴が残る場合であれば、スキャンデータで保存することで、紙の領収書等の保存が不要となる制度です。画期的な制度だと思いますが、紙での検索とスキャンデータでの検索など、実務面では、すぐに紙を廃止できるか否かは微妙に感じます。データだと、バックアップなどの仕組みをしっかりと講じないと、ミスで一瞬にしてすべて消えてしまうなどの間違いが起こりえます。

 令和4年1月1日以後に保存する書類に適用されます。

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