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2021年01月12日号 (第384)

法人税の改正②

 みなさん、こんにちは、緊急事態宣言という事態になってしまいました。報道からは、飲食店の夜間営業のみをターゲットにしているイメージですが、12月に忘年会など私の周りでは一度も開催されませんでしたし、多少違和感です。

 さて、今回は、令和3年度税制改正の法人税の2回目で、研究開発税制について、ご紹介していきます。

研究開発税制の概要

 改正を繰り返し、非常に全体像が見えにくいのが研究開発税制ですが、大きく分けると以下の3つに分類できます。

①試験研究の総額に係る税額控除制度(総額型)

 青色申告法人が、損金の額に算入される試験研究費の額がある場合に、試験研究費の額に一定割合を乗じて計算した金額を、税額控除できる仕組みです。

②中小企業技術基盤強化税制

 中小企業者又は農業協同組合等である青色申告法人が、損金の額に算入される試験研究の額がある場合に、上記①に代えて適用する時は、試験研究費の額に一定割合を乗じて計算した金額を税額控除できる仕組みです。

③特別試験研究費の額に係る税額控除制度(オープンイノベーション型)

 青色申告法人が、損金に算入される特別試験研究費の額がある場合に、上記の①と②の制度とは別枠で、特別試験研究費の額の一定割合の金額を税額控除できる制度です。

 なお、特別試験研究費の額は、上記①又は②の計算に含めることはできません。

 特別試験研究費の額とは、試験研究費の額のうち国の試験研究機関、大学その他の者と共同して行う試験研究、国の試験研究機関、大学その他の者に委託する試験研究、中小企業者からその有する知的財産権の設定又は許諾を受けて行う試験研究、その用途に係る対象者が少数である医薬品に関する試験研究などに係る試験研究費の額をいいます。

◆試験研究の総額に係る税額控除制度(総額型)の改正点

 研究開発のインセンティブとして、総額型の控除率が6%から2%へ引下げられます。上限を14%とする特例は2年間延長されます。なお、従来は増減試験研究割合が8%超か否かで控除率の増減が判定されましたが、9.4%超か否かでの判定となります。

改正後の計算式

①増減試験研究費割合>9.4%

 10.145%+(増減試験研究費割合-9.4%)×0.35 (ただし、上限14%)

②増減試験研究費割合≦9.4%

 10.145%-(9.4%―増減試験研究費割合)×0.175 (ただし、下限2%)

※なお、試験研究費割合が10%を超える場合は、下記の計算式による上乗せがあります。

 ①の控除率×(試験研究費割合-10%)×0.5 (ただし、上限10%)

◆中小企業技術基盤強化税制

 中小企業版の研究開発税制は、控除率の上限は従来どおり17%、下限は12%と変更はありませんが、増加か減少かの分岐点が8%から9.4%へ引き上げられています。

改正後の計算式

①増減試験研究費割合>9.4%

 12%+(増減試験研究費割合-9.4%)×0.35 (ただし、上限17%)

②増減試験研究費割合≦9.4%

 12%

※なお、試験研究費割合が10%を超える場合は、下記の計算式による上乗せがあります。

 ①の控除率×(試験研究費割合-10%)×0.5 (ただし、上限10%)

 中小企業向け税制なので、下限の控除率が12%と優遇された状態は維持されています。

◆控除率の上乗せ

 通常、総額型と中小企業技術基盤強化税制は、法人税額の25%までの税額控除とされています。ただし、試験研究費割合が10%を超える場合に、下記の計算式による上乗せがあります。これは、従来どおりで変更はありません。

法人税額×(試験研究費割合-10%)×2 (ただし、上限10%)

 また、今年の改正点として、以下の要件をすべて満たした場合には、さらに法人税額の5%部分について、控除上限額が上乗せされます。コロナ禍で、売上減少している企業への救済的な措置と考えられます。

①基準年度に比べて当期の売上が2%以上減少
②基準年度に比べて試験研究費の額が増加

◆オープンイノベーション型

 対象となる特別試験研究費の額に、国立研究開発法人の外部化法人との共同研究及び国立研究開発法人の外部化法人への委託研究に要する費用が加えられます。

 特別試験研究費の対象となる特別研究機関等との共同研究及び地別研究機関等への委託研究について、特別研究機関等の範囲に人文系の研究機関が加えられます。

 その他、要件等について若干の追加がされています。

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