税務最新情報

2020年10月20日号 (第376)

税務調査で確認される売上の日付

 みなさん、こんにちは、すっかりと秋らしい気候になってきました。GoToトラベルキャンペーン、GoToEatキャンペーンなどの影響もあり、旅行業界、飲食店業界に活気が戻りつつあります。

 さて、今回は税務調査の際に、売上の日付について、どのような視点で確認されるかについてご紹介していきます。

売上の日付に関する誤解

 売上の日付に関して、経営者で誤解されているパターンが二つあります。一つは、入金されてないのだから税金がかかるのはおかしいという入金と売上を混同しているケースです。もう一つは、請求書を決算をまたいでから発行しているのだから売上ではないと誤解するケースです。

 入金と売上の混同については、経営者になりたての頃に誤解しやすいケースです。しかし、ベテラン経営者でも、入金されていないのなら税金を支払うことができないのだから、課税されるべきではないというキャッシュフローの理屈から考えられる方もいらっしゃいます。例えば、売上を計上して、代金を払ってもらえず入金がない場合に、税金が払えるのかという論点です。このあたりは、法人税法の考え方はドライで、売上に計上したら、入金があろうがなかろうが、税金がかかるという結論になります。

 また、請求書の発行日=売上という誤解はありがちです。ただ、この辺りも請求書を出しているか否かは、全く関係なく、物販であれば納品が済んでいるか否か、役務の提供であれば、役務の提供が完了しているか否か、請負契約であれば請負が完了しているか否かで、売上を計上すべきか否かが変わってきます。

◆出荷基準と検収基準

 物販であれば、納品が済んでいるか否かと書きましたが、実際に納品をどの段階で捉えるかという問題生じます。出荷基準と検収基準という考え方があります。出荷した段階で納品と捉えるのが出荷基準で、相手から検収の通知が届いたらその検収の日付で納品と考えるのが検収基準です。

 役務の提供や、請負契約でも、相手からの検収通知や作業完了通知の日付によって、役務提供の完了、請負契約の完了と考える検収基準のような考え方があります。

 出荷基準であれば、あまり問題になることは少ないのですが、検収基準の場合に、出荷から検収の通知の日付まで期間が開いてしまうケースがあります。4月決算で、5月の連休で検収日まで間が開いてしまうなどはやむを得ないですが、ソフトウェアの納品などの場合で、検収に時間がかかるようなケースもあります。

 税務調査で、検収基準を採用している場合は、検収日が明らかになる書類の提示を求められますし、納品から検収の完了まで間隔が開きすぎているような場合には、理由の確認などが行われます。検収基準を採用しているのにも関わらず、営業担当者が電話で請求書発行してよいかの確認をとっているケースなどは、検収日がいつなのかについて問題となることも起こります。

◆担当者のうっかりや不正による売上の計上漏れ

 実務をやっていると担当者のミスによる売上の翌月扱いというケースに遭遇します。月末までに納品済みなのですが、社内での報告を失念し、請求書の発行を翌月にしれっと回すなどの対応です。担当者が、上司に怒られることを防ぐために、売上計上のタイミングが事実より遅れてしまうケースです。

 また、担当者が客先に頼まれて、請求書を発行するように報告しないケースもあります。理由は、客先の資金繰りの関係で、約定どおりに払えなくなるので、請求書の発行を遅らせるというようなケースです。担当者からすると入金が遅れると怒られるので、それを回避することと客先との関係維持のために、やむを得ず受けてしまうようなケースです。このような場合は、それなりに金額がまとまるので、税務調査以前に発覚するケースもありますが、税務調査で発覚する場合もあります。


 担当者のうっかりや担当者の不正であったとしても、税務調査で売上の計上漏れの発覚があれば過少申告加算税の対象になりますし、会社が責任を負うことになります。社内的に、そのようなミスや不正がおきない仕組みを構築することが重要です。

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