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2020年09月23日号 (第373)

マンション購入時の課税仕入について従来と異なる判決!

 みなさん、こんにちは、随分と過ごしやすい気候になりつつあります。今回は、消費税絡みの裁判で、従来と異なる結論の判決が新たに出たことに関連してご紹介します。

マンション転売の際の仕入れに関する取扱い

 消費税では、仕入れにかかる消費税について、その仕入れが、課税売上にのみ要するものか、非課税売上のみに要するものか、課税売上と非課税売上の両方に共通するものなのかの3つに区分します。

 今回の事例で問題になったのは、マンションの転売業者が、仕入れたマンションについて、課税売上にのみ要するものに該当するのか、あるいは、課税売上と非課税売上共通の仕入れに該当するのかという論点です。

 マンションを仕入れて、利用しないまま売却すれば、課税売上のみに要するものと客観的に判断できますし、問題は生じません。問題となるのは、マンションを購入したあと、住宅として賃貸している状態が発生する場合です。マンションの売却は課税売上ですが、住宅としての賃貸は非課税売上となります。転売目的で購入したマンションの仕入れが、この場合、課税売上のみに要するものなのか、課税売上と非課税売上共通に対応するものなのかについて、争われていた事案です。

◆国税庁側の見解、従来の判決と今回の判決

 平成12年に国税庁消費税課で作成していた消費税審理事例検索システムによれば、「購入物件は分譲することを目的として取得したマンションであり、課税仕入れの時点では課税資産の譲渡等のみに要するものに該当することは明らかであることから、仮に一時的に賃貸用に供されるとしても、継続して棚卸資産として処理し(宅地建物取引業者の免許を取得するまでの間は固定資産として処理する場合を含む。)、将来的にはすべて分譲することとしているものについては、法第30条第2項第1号イの課税資産の譲渡等のみに要する課税仕入れに該当するものとして取り扱って差し支えない。」としていました。

 ところが、平成17年11月10日裁決では、共通区分とする判断をしています。

【国税不服審判所】(平17.11.10裁決、裁決事例集No.70 369頁)

 また、令和元年10月11日付の東京地裁判決で、ムゲンエステート社は、同種の事案で、共通区分と取扱うとして、納税者が敗訴しています。

 そして、令和2年9月3日に東京地裁で、同種の案件でエー・ディー・ワークス社が勝訴しました。細かな、論点は省略しますが、賃貸収入は副産物として位置づけ、転売目的である以上、課税売上のみに対応するとの判断です。

◆実務の対応はどうするのか?

 このような同種の案件に、反対の判決が出た場合に、実務ではどのように対処すればよいのかという問題が生じます。ただし、この問題に関しては、令和2年度税制改正で、居住用賃貸建物の取得に係る消費税については、全額について仕入税額控除を認めないこととして、3年内に売却や居住用以外の賃貸収入が生じた場合は調整計算が行われる仕組みとなっており、令和2年10月以降取得の実務では問題となりません。

 一方で、令和2年9月までに購入した転売用マンションについて、どのような処理を行うのか。また、更正の請求が可能な期間分について、どのような対応を行うのかについては、非常に大きな問題です。ここまで、同種の案件で真逆の判決が出てしまうと、実務では困ってしまいます。

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