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2020年09月10日号 (第372)

連結納税の駆け込みに牽制球

 みなさん、こんにちは、夏も終わり台風の季節になりました。昨年の台風の際には、ベランダの水が溢れて下の階へ水漏れが起きたという事例がありました。ベランダの排水口は、枯れ葉などで詰まりやすいので、この時期に掃除などをしておかないと、水漏れや浸水の原因となるので、気をつけましょう。

 今回は、現役の調査官が租税研究講演で、連結納税の駆け込み利用に牽制球的な発言をされているので、ご紹介していきます。

連結納税制度とグループ通算制度

 平成14年に連結納税制度が導入されました。連結納税制度を選択することで、100%子法人と親法人の所得を合算して申告することが可能となりました。黒字法人と赤字法人が混在するような場合は、所得が通算され結果としてグループ全体の税負担が軽減されるメリットがありました。

 令和2年度税制改正により、従来の連結納税制度の利用は令和4年3月決算までとされ、その後はグループ通算制度へ移行することとなりました。

 基本的な、コンセプトは同じで、グループ内での損益通算が可能となる計算方法ですが、従来の連結納税制度は、親法人がグループ全体の納税と申告を行う仕組みでした。ただし、子法人で軽微な間違いがあっても親法人で申告が必要となるなど、親法人に負荷がかかる制度となっていました。子法人が多数ある場合などには、親法人側での管理にも限界があり、連結納税制度の選択に踏み切れないなどが問題点として指摘されていました。

 グループ通算制度では、グループ内で所得が通算できるメリットなどは活かした状態で、申告を各法人が行う仕組みです。損益通算されるのは、基本的には当初申告で、グループ内の各法人で、修正申告や更正の請求が必要な場合は、各法人が単独で行う仕組みとなり、親法人の負担が軽減されることが期待されています。

◆連結納税制度を今選択するメリット

 現在、連結納税制度を利用していない場合で、新制度導入前に敢えて連結納税制度を選択することで得られるメリットがあります。例えば、コロナの影響で親法人に多額の欠損金が生じる場合は、連結納税制度を選択の後、グループ通算制度に移行することで、親法人の欠損金をグループで利用することが可能となります。

 グループ通算制度では、グループ通算制度適用開始前の親法人の欠損金は、親法人でしか利用できない仕組みとなります。今、巨額の損失が親法人で計上されるような場合には、連結納税制度を経由してグループ通算制度への移行がメリットとなるケースがあります。

◆租税研究講演で指摘された方法

 通常、連結納税制度を利用すると、100%子法人の状態で、任意に連結納税制度から離脱するということはできません。ところが、現在連結納税制度を利用している法人は、基本的にはグループ通算制度へ移行することになるのですが、経過措置により所定の手続きで単体納税法人に戻ることができます。

 この点について、租税研究講演で現役の調査官が、連結納税の駆け込み適用のあと、グループ通算制度へ移行しない行為について許さないとする発言がありました。この発言は、税務専門誌などでも取り上げられて、話題となっています。

 趣旨とするところは、コロナの影響でグループ内で大きな赤字が見込まれるときだけ連結納税を利用して、その後経過措置で単体申告へ戻ることへの牽制と取られています。 元々の連結納税制度が、任意の離脱を認めておらず、新制度移行で子法人側の負担を考慮して経過措置を設けたのに、それを濫用するのは問題だということなのでしょう。ただ、悪意はなく連結納税制度を採用したけれど、長期的な判断として経過措置を利用という場合にでも、否認されるリスクを考慮しなくてはいけないという意味では、ちょっと気になるところです。

 

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