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2020年08月11日号 (第369)

今年の年末調整は国税庁のソフトを利用?

 みなさん、こんにちは、梅雨明けですが、すぐにお盆になってしまいます。そして、コロナの感染者数も多い状態が続いており、経営環境としては非常に危機的な状況が続いています。業種による差が大きいところですが、本当に一寸先は闇という状況です。

 さて、今回は、今年の年末調整の電子化の話題です。時期的には、少し先の話ですが、国税庁のFAQが7月に改定されたので、その内容についてご紹介していきます。

年末調整手続きの電子化

 令和2年分から、年末調整手続きの電子化が行われます。具体的には、従来は、従業員が紙で会社に提出していた、保険料控除申告書及び住宅ローン控除申告書などを、国税庁が作成した「年末調整ソフト」を利用して、会社に電子データとして提出する仕組みのことです。「年末調整ソフト」では、マイナポータルと連携して、生命保険料控除証明書、地震保険料控除証明書、年末残高証明書などを自動で取り込むことを想定しており、紙の証明書が不要になり、入力作業が省力化できることがメリットとなります。

 さて、会社側が行う年末調整作業ですが、国税庁の「年末調整ソフト」は年末調整の計算を行ってくれるものではなく、会社側は、従来どおり給与計算ソフトなり年末調整用のソフトを利用して、従業員から提供された電子データをインポートして、年末調整を行うことになります。逆に、手計算で年末調整を行っているような会社の場合は、電子データを受け取っても処理のしようがないので、「年末調整ソフト」で印刷した紙のデータを受け取って作業を行うことになります。

 「年末調整ソフト」自体は、パソコンだけでなくスマートフォンでも利用できるので、浸透してしまえば、従業員数が多い会社にとっては、入力作業、確認作業などかなりの手数を減らすことが期待できます。

◆現実的な課題

 年末調整の電子化の現実的な課題としては、パソコンやスマートフォンを利用することが苦手な従業員が多数いる場合です。一部の人だけが、電子データというのも社内としての統制が取りにくいので従来の紙による提出になってしまうかもしれません。

 国税庁の「年末調整ソフト」は、マイナポータル連携を特長としていますが、マイナンバーカードの取得率が15%程度となっており、どの程度、有効に機能するのかが読みにくいです。マイナポータルと連携しない場合でも、生命保険会社や金融機関から「年末調整ソフト」で電子データを個別に取得できるようなサービスも用意されるそうですが、そのような連携がない場合は、結局手入力となってしまいます。また、生命保険会社、損害保険会社、金融機関で、今年の年末調整までに電子化への対応ができる割合は、それほど高くないことが報道されており、今年からの運用への足かせのひとつになっています。

◆会社が今から準備できること

 年末調整の電子化に向けて、会社が今から準備すべきことは、従業員にマイナンバーカードの取得を促し、マイナポータル連携できるようにしておくことが最重要と思われます。

 それ以外の対応としては、パソコンやスマートフォンを利用しない人向けに、「年末調整ソフト」を利用できるパソコンを用意して、その利用についてサポートできるようなスタッフを教育しておくことです。

 また、今年については、試験的運用と捉えて、一部の人についてのみ運用を行い、来年度から本格的に取り組むという形でもよいと思います。

 詳しくは、下記をご参照ください。

【国税庁】年末調整手続の電子化に向けた取組について(令和2年分以降)

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