税務最新情報

2020年07月13日号 (第366)

伝家の宝刀

 みなさん、こんにちは、7月になってコロナの影響で延期になっていた税務調査について、再度日程調整の連絡が入るようになりました。調査の担当者は、調査が仕事ですからコロナの影響で本当にできることが限られていたと思います。ただ、東京は原稿を書いている時点で新たな感染者が100人超えを連発している状況で、調査を行うべきかというと微妙な状況のように感じますが、なかなか難しいものですね。

 今回は、税務調査で問題になったときの超法規的な措置、同族会社の行為計算否認についてご紹介していきます。

税法における伝家の宝刀

 税法の学習をすると、定番の事項として同族会社の行為計算否認という言葉を学習します。そして、同族会社の行為計算否認規定について、「伝家の宝刀」という言い方をすることが度々あります。代々、家に伝わる宝刀なので、滅多に使われることはないものの、いざという時に使う刀のことと説明されています。

 同族会社の行為計算否認、条文としては、下記のとおりです。

第132条 (同族会社等の行為又は計算の否認)

 税務署長は、次に掲げる法人に係る法人税につき更正又は決定をする場合において、その法人の行為又は計算で、これを容認した場合には法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるものがあるときは、その行為又は計算にかかわらず、税務署長の認めるところにより、その法人に係る法人税の課税標準若しくは欠損金額又は法人税の額を計算することができる

 ◆1 内国法人である同族会社

 ◆2 イからハまでのいずれにも該当する内国法人

  イ 3以上の支店、工場その他の事業所を有すること。

  ロ その事業所の2分の1以上に当たる事業所につき、その事業所の所長、主任その他のその事業所に係る事業の主宰者又は当該主宰者の親族その他の当該主宰者と政令で定める特殊の関係のある個人(以下この号において「所長等」という。) が前に当該事業所において個人として事業を営んでいた事実があること。

  ハ ロに規定する事実がある事業所の所長等の有するその内国法人の株式又は出資の数又は金額の合計額がその内国法人の発行済株式又は出資(その内国法人が有する自己の株式又は出資を除く。) の総数又は総額の3分の2以上に相当すること。

 アンダーライン部分ですが、すごい内容です。法人の行為・計算で、法人税を不当に減少させる結果となる場合は、行為・計算にかかわらず、税務署長が法人税を計算できるという内容です。行為・計算にかかわらず、税務署長が法人税を計算できるというのは、他の条文で地道に税額計算を規定しているのに、それを無視してよいという内容ですから、まさに超法規的な条文です。

◆伝家の宝刀だからこそ滅多に使われない

 条文の内容としては強力な内容で、税法の学習では特殊な条文として必ず取り扱われます。一方で、実務を行う上では、税理士の多くが一生に一度も関わることがない条文かもしれません。もちろん、抵触しないように配慮をしている部分はあります。

 よほどのことがないと適用されない条文ですが、では、どんなときに、この規定の適用が認められるのでしょうか。令和2年6月24日東京高裁で、同族会社の行為計算否認規定に関する判決が下されました。少し興味深いのは、同族会社の行為計算否認の適用は認めないという内容ですが、地裁と高裁で異なる理由付けがなされた点です。

 地裁では、①法人税減少利益以外の経済的利益がおおよそないか、②その行為の必要性を全く欠いているか、いずれかでなければ、行為計算否認の規定は適用されないと判断しました。

 高裁では、①通常想定されない実態と乖離した形式であるほど不自然か否か、②税負担の減少以外の合理的な事由が存在するか否かに照らして、判断しました。

 いずれも、国の敗訴ですが、地裁と高裁で、同じ結論に至るも異なる理由付けをしている部分がこの条文の取扱の難しさを物語っています。

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