税務最新情報

2020年06月22日号 (第364)

令和元年度のマルサの概要

 みなさん、こんにちは、蒸し暑く過ごしにくい季節になってきました。この暑さの中で、マスクをしているのって辛いですね。ユニクロが涼しい素材のマスクを販売すると報道がありましたが、コロナの時代に向けたビジネス展開が始まっているようです。

 さて、今回は、コロナに関する新しい税制の話題がなかったので、マルサについての内容をご紹介します。今年の6月に国税庁より「令和元年度 査察の概要」という資料が公表されたので、そちらの内容をまとめてみました。

◆査察と税務調査は全く別物

 もう何十年も前に「マルサの女」という映画がヒットしたことがあり、マルサという言葉が有名になりました。お客さんとの会話でありがちなのが、通常の税務調査のことをマルサと思っている人、非常に多いです。

 マルサは、査察制度のことで、悪質な脱税者に対して、刑事責任を追求し、その一罰百戒の効果を通じて、適正・公平な課税の実現と申告納税制度の維持に資するものです。それに対して税務調査は、悪質だからということではなく、一定の規模以上の会社であれば定期的に行われますし、小規模な会社や個人事業者でも、ちょっとしたきっかけがあれば行われます。

 税金の間違いがないか調べられる点は同じですが、刑事責任を追求する目的の査察は、全く異なる制度のものです。

◆令和元年度の取組

 令和元年度は検察庁に告発した件数は116件、脱税総額は93億円だそうです。重点事案としては、消費税還付事案11件、無申告ほ脱事案27件、国際事案25件を告発と紹介されています。

 令和元年度における査察案件の一審判決はすべてが有罪判決となっているそうで、マルサに入られたら有罪というのは、従来どおりです。

◆紹介されている事案

①消費税の輸出免税制度を悪用して、取引実態のない宝飾品の輸出取引を装い複数の法人で還付申告を行った事案

 輸出の証明書が必要なはずですが、調査に入られたらダメ元で脱税したのでしょうか。

②競艇で得た多額の払戻金の無申告ほ脱事案

 他人名義を利用したようです。

③芸能スタイリスト会社の無申告ほ脱事案

 単純に無申告のようです。

④国外財産調書不提出にかかる罰則を初適用

 平成24年にできた制度ですが、払う税金をごまかすのではなく、報告しなければいけない調書を提出せずに罰則が適用された初めてのケースだそうです。

⑤海外法人を利用して法人税を免れた情報商材関連会社の事案

 情報商材で得た利益を、海外の法人を利用して脱税していたところ、租税条約に基づく情報交換制度により不正取引が解明されたそうです。

⑥投資用不動産販売等の関連グループ5社を告発

 グループ会社と虚偽の契約書に基づく架空の違約金の計上などを行っていたそうです。この辺りは、グループ会社間で仕事をした場合は適正な対価を受け取らないと寄付金認定される可能性があるなど、金銭の授受は必要、一方で高額過ぎて架空と言われればアウトなわけで、実務的には難しい話です。

⑦福島原発の除染にからむ建設会社社員による所得税事案

 建設会社の従業員として勤務していた者が、除染工事にからみ複数の下請け業者から多額の謝礼金収入を得ていて、その謝礼金を借名口座へ振り込ませて申告していなかったそうです。昔からありがちな事例です。

⑧インターネット広告会社を告発

 不正加担先と通謀して、虚偽の契約書を作成して架空の外注費を計上するなどの方法で脱税していたそうです。

⑨消費税還付コンサルにより多額の利益を得た税理士を告発

 不動産投資家に対して金地金売買を利用した消費税還付コンサルティングを行うことで多額の利益を得ていた税理士本人の脱税だそうです。所得税の申告書では架空の支払手数料を計上して、コンサルティング会社では売上の除外を行っていたとのことです。

◆不正資金の隠匿場所

 脱税によって得た不正資金の多くは現金や預貯金として留保され、隠匿場所としては、和ダンスに作り込まれた隠し戸の中、個人名義で契約したレンタル収納スペースのスーツケースの中などに隠していたそうです。

  過去の事例では、庭先に埋めていた事例などがありますが、まさに、映画の世界のような話が現実に行われているのですね。

 

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