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2020年06月01日号 (第362)

簡易課税と課税事業者選択に関する取扱いの特例

 みなさん、こんにちは、コロナの影響ですっかり影が薄くなった消費税の軽減税率ですが、軽減税率の導入にともない、簡易課税制度の適用について、特例的な取扱いがあります。ところが、それに、コロナの影響の特例的な取扱いが加わり、簡易課税の話だけでなく、課税事業者選択の話も加え、非常にわかりにくい状態になっているので整理してみます。

基本的には、事業年度が開始する前に届出

 課税事業者の選択や簡易課税を選択をする場合、あるいは課税事業者選択の取りやめ、簡易課税の取りやめの場合は、基本的には、その事業年度が開始する前に届出をする必要があります。

 例えば、令和元年5月1日から令和2年4月30日までの事業年度から、簡易課税を適用したいとか、取りやめをしたい場合には、平成31年4月30日までに、届出が必要というのが原則的な取扱いです。

 なお、簡易課税が適用できるのは、基準期間の課税売上高が5,000万円以下であるとの要件が必要です。さらに調整対象固定資産の取得や高額特定資産の取得などがあった場合に、届出書の提出制限という取扱いがあります。

◆軽減税率の導入に伴う届出書の提出に関する特例

 軽減税率の導入に伴い、仕入れを税率ごとに区分することが困難な中小事業者は、簡易課税制度の適用に関して、令和元年10月1日から令和2年9月30日までの日の属する課税期間について、簡易課税を選択する場合は、提出した課税期間から適用可能となります。

 例えば、令和元年7月1日から令和2年6月30日までの事業年度から、簡易課税を適用したい場合には、令和2年6月30日までに、届出書を提出すれば簡易課税が適用可能です。

 なお、この取扱いは、軽減税率導入で仕入れについて、区分が困難な場合向けなので、簡易課税へ変更する方向への取扱いだけが特例となっています。なお、仕入れを税率ごとに区分することが困難な中小事業者としていますが、通達で、「その困難の度合いを問わず、同項に規定する経過措置を適用することができることに留意する。」とされており、基準期間の課税売上高が5,000万円以下であれば適用可能となります。

 この取扱いは、調整対象固定資産や高額特定資産の取得がなければ、困難の度合いを問わず適用になります。一方で、調整対象固定資産や高額特定資産を取得した場合の届出書の提出制限がある場合は、税率の異なる課税仕入れの経理について「著しく困難な事情があるとき」に限って、進行年度中での簡易課税への変更が認められます。例えば、大きな設備投資をした飲食店などは、著しく困難に該当することになります。

◆コロナ特例による届出特例

 新型コロナウイルス感染症等の影響で、令和2年2月1日から令和3年1月31日までの間のうち、任意の連続した1ヶ月以上の期間で、収入が前年対比で概ね50%以上減少している事業者は、課税事業者の選択、課税事業者の選択を取りやめる届出について、事後的に提出することで変更が認められます。

 例えば、平成31年4月1日から令和2年3月31日の事業年度は、申告期限は令和2年5月末ですが、この場合は、3月の売上高が前年対比で50%以上減少している場合には、令和2年の5月末までに課税事業者選択、あるいは、取りやめの申請書の提出を行えば、平成31年4月1日から令和2年3月31日の事業年度について遡って、課税事業者を選択することや、取りやめが可能です。この場合の課税事業者選択は、2年間の継続適用などの強制もなくなります。さらに、調整対象固定資産や高額特定資産を取得した場合の、納税義務の免除の制限もされません。

 簡易課税制度については、「災害その他やむを得ない理由が生じたことにより被害を受けた場合」の特例が設けられています。

 例えば、新型コロナウイルス感染症等の影響による被害を受けたことで、①通常の業務体制の維持が難しく、事務処理能力が低下したため簡易課税へ変更したい、②感染拡大防止のために緊急な課税仕入れが生じたため一般課税へ変更したいなどの場合には、課税期間開始後でも、税務署長の承認を受けることで、簡易課税を選択したり、取りやめることが可能となります。

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