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2020年04月01日号 (第357)

大法人の電子申告の義務化にご注意ください

 新型コロナウイルスの影響で、会社の倒産に繋がるような売上減少になっている業種もあります。治療薬が見つかり、今回の混乱がある程度収束しても、経済的な混乱は長く続く可能性を考慮して、経営上の意思決定を行っていく必要があります。

 さて、今回は、大法人の電子申告の義務化についてご紹介していきます。

平成30年度税制改正による電子申告の義務化

 今から2年前の税制改正で、2020年4月1日以後開始する事業年度からは、大法人に該当する場合は、e-Taxによる申告が義務付けられています。誤解が多いのは、2020年3月決算までは紙の申告でOKなのですが、2020年4月からというアナウンスの影響で、2020年3月期について対応しなければならないという誤解が見受けられます。義務化は、2020年4月1日以後開始する事業年度なのでご注意ください。

 電子申告が義務化される大法人については、株式会社・公益法人等・協同組合等であれば資本金の額等が1億円超の法人が該当します。また、相互会社、投資法人、特定目的会社は規模に関わらず電子申告の対象となります。

◆電子申告の対象となる申告

 2020年4月1日以後開始する事業年度と聞いて、来年の5月からと思うとそれも誤解です。確定申告だけではなく、中間申告、修正申告についても電子申告となります。特に消費税については、大法人の場合は中間申告が月ごとというケースが普通にありますし、4月以後の税務調査などにともない修正申告する必要が生じた場合も、電子申告による必要があるので、現実的には4月以降は、電子申告できる体制にしておくべきです。

◆財務諸表、勘定科目内訳明細書、会社事業概況書なども電子申告が必要

 従来から、電子申告をしている法人でも、財務諸表は別途紙で送付しているケースが多くありました。税理士事務所で会計処理をしている場合は、そのまま電子申告できるケースが多いのですが、会社で決算書を作成している場合は、紙での対応というケースになってしまいがちです。これについても、会社の会計システムで電子申告の形式へ保存できるように準備する必要があります。

 また、規模が大きな会社だと、売掛金の帳票だけで数十枚などの規模になるため、税務署指定のフォーマットではなく、会社で作成したエクセルデータをそのまま印刷して送付などの対応でしたが、電子申告に合わせた形での作成が必要となります。実際には、エクセルの元データを加工して、内訳書作成ソフトにインポートするなどの対応になります。

◆届出書の提出が必要

 法律で、大法人について電子申告の義務化をしておきながら、対象なる法人には「e-Taxによる申告の特例に係る届出書」の提出が必要となります。義務化なのに届出については違和感もありますが、仕方ありません。2020年4月開始事業年度の法人の場合は、事業開始日から1月以内に提出が必要なので、2020年4月末までの提出が必要です。もっとも、提出を忘れても税務署から連絡が来ると思われますが、失念しやすいと思われますので気にしておいてください。

 なお、電子申告が義務化された法人が、紙で申告書を提出すると無申告扱いになります。こちらも、納税者の視点からするとびっくりするほど厳しい取扱です。気をつけましょう。

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