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2020年03月10日号 (第355)

申告期限について

 みなさん、こんにちは。前回、確定申告期限を延長すべきではないかとの話をしていたら、思いがけずに素早い対応で申告期限が延長されることになりました。政治的な判断だと思いますが、振替納税の日付について全国銀行協会との調整など、各市区町村で行う住民税の計算まで、いろいろと内部の人たちはたいへんそうです。

 さて、今回は、申告期限について、あれこれと書いていきます。

今回の確定申告の期限の延長に関する注意点

 今年の確定申告については、申告所得税、個人事業者の消費税、贈与税について申告期限・納期限が延長されました。延長された申告期限・納期限は、令和2年4月16日です。申告所得税と贈与税は、1ヶ月の延長ですが、個人事業者の消費税の申告期限は3月31日から4月16日ということで、1ヶ月ではなく、申告所得税と贈与税とタイミングを合わせた形になりました。

 なお、注意しなければならないのは、青色申告の承認手続きや、青色事業専従者給与に関する届出などについては、執筆時点では微妙な状況です。国税通則法11条の規定によれば国税庁長官の告示で延長させることは可能なようですが、現状では延長されるのか不明ですので、3月16日までに提出しておくほうが無難です。

 また、振替納税ですが、申告期限が延長されることで、日付も変更になります。現時点では、正式な日時は公表されていませんが、令和2年6月1日になるとの噂は、複数の方面から聞いています。いずれにしても、重要な点なので気にしておく必要があります。

◆申告期限までに申告が行えない場合

 今年の特殊事情の話は、さておいて、申告期限までに申告が行えなかった場合は、どうなるのでしょうか。お客さんから、聞かれることが多い質問です。実際に、社長さんが体調を崩して申告が遅れてしまったというケースには、何度か遭遇したことがあります。

 まず、期限内に申告できなかった場合は、いったん無申告の状態となります。ただし、期限が遅れても確定申告することは可能で、期限遅れの申告のことを期限後申告と呼びます。

 期限内申告がなかった場合は、無申告加算税が課せられます。無申告加算税は、税額50万円までの場合は15%、50万円を超える場合は20%とされています。過少申告加算税が10%ですから、過少申告加算税よりも重いペナルティという位置づけです。

 さらに、無申告ということは、納期限までに税金も納めることができていない状態なので、延滞税が生ずることになります。

 一方で、無申告の場合でも、うっかり期限に遅れてしまったとか、諸事情があるので、自主的に期限後申告を行えば、無申告加算税は5%に軽減されることになります。

 また、以下のすべての条件を満たす場合には、無申告加算税が課せられない取扱があります。

① 期限後申告が、法定申告期限から1月以内に自主的に行われていること。

② 期限内申告をする意思があったと認められる一定の場合に該当すること。

 なお、一定の場合とは、次の(1)及び(2)のいずれにも該当する場合をいいます。

(1) その期限後申告に係る納付すべき税額の全額を法定納期限(口座振替納付の手続をした場合は期限後申告書を提出した日)までに納付していること。

(2) その期限後申告書を提出した日の前日から起算して5年前までの間に、無申告加算税又は重加算税を課されたことがなく、かつ、期限内申告をする意思があったと認められる場合の無申告加算税の不適用を受けていないこと。

 申告しなかった場合に、どうなるのか?よくある質問なのですが、答えが分岐して簡単に答えるのが難しい分野です。

◆無申告加算税以外のデメリット

 無申告加算税以外のデメリットとしては、個人の場合、青色申告控除で65万円の控除を受けることができなくなることです。10万円の青色申告控除は期限後でも可能ですが、所得が高い場合には大きな影響が出ます。

 また、法人の場合は、2期続けて期限内申告がされなかった場合は、青色申告が取り消されてしまいます。青色申告が取り消されると、青色申告を要件とする租税特別措置法が利用できない、繰越欠損金が利用できないなど、大きなデメリットがあるため絶対に避けたい事態です。

 

 さて、今回の申告期限の延長の取扱、人混みの中にでかけないことが趣旨ですから、可能な限り、電子申告や郵送などで済ませたいところです。確定申告の相談会場は、例年に比べれば空いていますが、それでも人が多い状況でした。また、還付申告の場合は、5年間申告することが可能なので、こちらも慌てずに、様子を見ながらの方がよいかもしれません。

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