税務最新情報

2019年12月20日号 (第347)

令和2年度税制改正大綱が公表

 みなさん、こんにちは、年内最後の税務情報となりました。今年は、12月12日に与党による大綱が公表されました。例年と異なるのは、アベノミクスという言葉が使われていなかった点です。深い意味はないのかもしれませんが、全体的には小粒な改正という感じです。

 今回は、税制改正大綱に基づき、来年度の税制改正の全体像をご紹介していきます。

◆シングルマザー税制

 昨年の改正で導入されるか議論になり、今年の改正に持ち越しになりました。シングルマザー税制とタイトルで書きましたが、未婚のひとり親への所得控除の創設です。

 従来は、寡婦(寡夫)控除として、離婚または死別の場合に寡婦控除という制度があり、所得控除が受けられました。

 未婚のひとり親の場合は、年間35万円の所得控除が受けられるようになりました。要件としては、①生計を一にする子を有すること、②合計所得金額が500万円以下であること、③内縁関係の者がいないことです。

 寡婦(寡夫)控除については、寡婦と寡夫を同一条件にして、①生計を一にする子を有すること、②合計所得金額が500万円以下であること、③内縁関係の者がいないことと、整理され、所得控除の額を35万円として、未婚のひとり親と同条件となりました。また、特別の寡婦という特例はなくなることになりました。

 令和2年分以後の所得税に適用されます。

◆節税防止策

 かねてから、噂されていた節税防止策が実施されます。以前から問題視され、大綱公表前から予想されていた内容です。

①国外中古建物の損益通算の制限

 国外の中古不動産を購入し、その償却費を計上して生じた損失と、国内所得を通算するという節税スキームが、富裕層の間で流行していました。具体的には、海外の中古木造物件について、非常に短い間で償却できることを利用して、赤字を作るというものでした。その赤字は累進税率の適用される所得と通算され節税効果をもたらし、売却の際には購入時と同等に近い金額で売却され所得は生じるものの分離課税が適用されるので税率差があるため節税が可能となっていました。

 令和3年以後は、国外中古建物から生ずる不動産所得について損失がある場合は、その国外中古建物の償却費についてはなかったものとみなすという内容です。

②アパート建築の消費税還付

 消費税の考え方では、非課税売上のために要する課税仕入は、本来は税額控除できない仕組みとなります。ところが、非課税売上のための課税仕入でも、結果としてその年度の課税売上割合が高ければ税額控除が可能となります。そのために、自動販売機を設置するとか、金の売買をするなど課税売上割合を高めることで、非課税売上のための課税仕入について還付を受けるという節税スキームが登場しました。それらを防止する趣旨で、資産の取得後、免税業者や簡易課税への切替が出来ないなどの節税防止策が制定されてきました。それでも、抜け穴が残っていたことを受けて、令和2年度改正で、直接的な規定として節税防止策が導入されることになりました。

 居住用賃貸建物(アパート・マンション)については、仕入税額控除を認めないこととするという内容です。この改正は、令和2年10月以降に居住用賃貸建物の課税仕入を行った場合に適用されます。なお、契約が令和2年3月末までの場合には適用外となります。

◆納税環境整備

①納税地の異動があった場合の振替納税

 振替納税を利用している個人が、移転して所轄税務署が変更になった場合に、異動届出書等に従来の金融機関から振替納税を行う旨記載すれば、そのまま振替納税が利用できます。従来は書類を提出し直す必要があったため非常に便利になりました。

②消費税の申告期限の延長

 法人税は、通常は決算後2ヶ月以内で申告期限となりますが、株主総会が3ヶ月目にある場合など状況に応じて申告期限を延長できる取扱がありました。一方で、消費税の申告期限には延長できる制度がなく、法人税の申告よりも早めに申告が必要という状況でした。

 今回の改正で、消費税についても、法人税の申告期限を延長することができる企業について、1ヶ月に限って申告期限を延長する特例が設けられます。

 

 その他論点については、次回以降各論でご紹介していきます。

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