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2019年11月20日号 (第344)
令和2年の所得税の変更点
みなさん、こんにちは、令和2年の税制改正大綱の公表まで、約1ヶ月です。各省庁からの税制改正の要望が財務省のサイトに公表されています。現状見ている限りでは、小粒な改正となりそうです。
今回は、令和2年より所得税について、大きく構造が変わるので、その全体像について、ご紹介していきます。なお、今回の年末調整には関係なく、令和2年分の所得税に関するご紹介です。
給与所得控除の引下げ
給与所得控除が引下げられます。収入額で162.5万円以下の人は、令和元年までは65万円の給与所得控除でしたが、令和2年からは55万円の給与所得控除となります。また、収入金額に応じてですが、収入金額で850万円以下までは、一律で10万円の給与所得控除の引下げとなります。
また、収入金額で850万円超で、給与所得控除は打ち止めで上限額は195万円となります。結果として、令和元年までは収入1,000万円超の場合は給与所得控除の上限が220万円だったものが、25万円の引下げとなります。
なお、基礎控除が10万円引上げになるので、収入850万円までの場合は、それほど大きな影響はありません。一方で、収入850万を超える人にとっては、直接的な増税になります。
◆変動する基礎控除
従来基礎控除は、一律で38万円でした。令和2年からは、合計所得金額2,400万円以下の人は、48万円の基礎控除となりました。基礎控除が10万円引上げられていますが、給与所得控除が引下げになっているので、納税者にとって有利とは言えない改正です。
また、合計所得金額が2,400万円を超えると基礎控除が逓減していき、合計所得金額2,500万円を超えると基礎控除がなくなっていしまいます。合計所得金額2,400万円超というと、少数派ですが、給与所得控除の引下げの影響も受けますから、それなりの増税になります。
ちなみに、扶養親族の所得要件は、給与所得控除が引下げになった代わりに、48万円以下となっており、収入金額としては従来と同じ103万円までです。また、配偶者控除や、勤労学生控除などについても、入り繰りはあるものの収入金額での比較では、変更がありません。
◆所得税額調整控除という新しい仕組み
令和2年からは、収入850万円を超える人にとっては増税となります、そのくらい稼いでいるなら増税が当然と思う方がいるかもしれません。しかし、収入が、それなりにあれば、それなりの住宅ローンを抱え、さらに子供の学費など、世代によっては大きな負担となります。そこで、介護や子育てなど負担が重い場合に備えて「所得税額調整控除」という新しい仕組みを設けました。
本人か扶養親族が特別障害者である場合、23歳未満の扶養親族がいる場合は、給与収入(1,000万円を超える場合は1,000万円)から850万円を控除した金額の10%を、所得控除とする内容です。
令和2年の所得税の改正ですが、令和2年1月の源泉徴収税額表が変更になっています。甲欄適用だと707,000円以上の部分から変更になります。また、給与所得控除が変更になるので、中途退職者で、源泉徴収票を記載する際に、給与所得控除後の金額などにも影響があります。給与計算システムを利用している場合は、バージョンアップが必須になります。
基礎控除38万円、給与所得控除65万円からという環境に長年慣れているので、数字を入れ替えるという意味では、面倒な改正だなと感じます。令和2年の年末調整の電子化に向けて、システムを一新してくださいというような趣旨もあるのかもしれません。
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