税務最新情報

2019年07月01日号 (第340)

消費税率引上げと価格設定・価格表示

 みなさん、こんにちは、7月になりました。源泉所得税の納期の特例を受けている場合に、1月から6月までの源泉税について、7月10日が納期限となりますのでご注意ください。延滞税のような日数計算ではなく、不納付加算税という期日遅れに対するペナルティがあるので、期限内納付を心がけてください。

 さて、今回は10月からの消費税率引上げと複数税率の導入に伴う、価格設定・価格表示の問題についてご紹介していきます。

◆複数税率による価格設定の問題

 飲食店を経営しているお客さんとの会話で、複数税率で気になるのは10月以降の価格設定です。飲食店なので、店内飲食については外食に当たるため標準税率となり、出前やテイクアウトの場合は飲食料品の販売となり軽減税率の適用となります。

 普通に考えれば、同じ食品でも税抜価格が同額であれば、店内飲食かテイクアウトかで、消費税込みの価格が異なることになります。消費者庁・財務省・経済産業省・中小企業庁から平成30年5月18日付で「消費税の軽減税率制度の実施に伴う価格表示について」という文書が公表されており、価格設定は事業者の任意であることから、税抜価格についてテイクアウトに高い値段を設定して、税込み価格を揃えることも認められるとしています。

 最近、スターバックスコーヒーが、店内飲食とテイクアウトで、それぞれ異なる税込み価格で販売する旨の報道がなされています。また、同じ記事の中で、価格表示は税抜き価格のみの表示になるとの方向だそうです。

 実務的な視点で考えると、キャッシュレス決済の比率が高い店舗や、レジがしっかりしているお店であれば、店内飲食とテイクアウトで異なる金額になることで、1円単位の釣銭が必要になっても対応可能だと思われます。一方で、町の食堂のように、ランチの時間だけごった返すようなお店で、混雑時にテイクアウトと店内飲食で金額が異なり、1円単位の釣銭が必要になるのは現実的ではないかもしれません。

 複数税率を取り扱う店舗では、価格について、税抜で揃えるのか、税込みで揃えるのか、8%から10%への引上げに伴う10円未満の端数処理を含めた、新料金をどのように設定するのか、価格設定の問題が浮き上がってきます。

◆令和3年4月からは総額表示が義務付け

 消費税率が5%から8%の引上げの際に、消費税転嫁対策特別措置法により誤認防止措置として、税抜表示が認められるようになり、その期限が令和3年3月末日までとなっています。令和3年4月以降は、消費者に対して、商品の販売、役務の提供などを行う場合、いわゆる小売段階の価格表示については、総額表示が義務付けられます。

 過去においても、小売段階での総額表示の義務付けは行われましたが、消費税率8%への引上げ、10%への引上げの再々延期により、長期間にわたり税抜表示が一般化していました。

 今年の10月に、消費税率の引上げ、端数の問題などで価格改定を行う事業者が多いと思います。当面利用可能な税抜表示を前提で価格設定するか、あるいは令和3年4月以降の税込み表示を見据えて価格設定をするのかについても検討が必要です。半年ごとに、料金表やメニューを更新する事業者と、何年も価格を変更しない事業者で、異なる対応が必要になると思われます。

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