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2019年03月01日号 (第388)

平成31年度税制改正(個人版事業継承税制)

 みなさん、こんにちは、3月になりましたが、穏やかな冬で、このまま春になってしまいそうな気候です。

 さて、今回は個人版の事業承継税制のご紹介をします。昨年の、法人版の事業承継税制が衝撃的な改正だったのに比べると、何となく今年の冬のように穏やかな改正というイメージです。

◆個人版事業承継税制の概要

 法人の事業承継税制と同様に、相続税の納税猶予と贈与税の納税猶予ということで、同じような構成となります。認定を受けた相続人又は受贈者が、平成31年1月1日から平成40年12月31日までの間に、相続又は贈与により事業用資産を取得し、事業を継続していく場合には、事業用資産に対応する相続税又は贈与税を納税猶予できる仕組みとなっています。

 猶予税額は10割で法人の事業承継税制と同様です。また、都道府県で認定を受けるなどの手続きも同様です。

 一方で、贈与税及び相続税の申告後は、3年に一度税務署に継続届出書を提出すればよい、先代経営者も後継者も青色申告の承認を受ける必要がある部分など、微妙に異なる部分もあります。

◆制度の内容

 法人の事業承継税制と同様、平成31年4月1日から平成36年3月31日までの5年間の間に都道府県に承継計画を提出することが必要になります。法人版でも同様ですが、制度の期限は10年で贈与・相続後に認定を受けることになりますが、その前提として5年間のうちに計画を提出しておく必要があります。

 対象となる資産は、事業の用に供されていた土地、建物および建物以外の減価償却資産で青色申告書の貸借対照表に計上されているものです。ただし、土地については、面積は400平米までで不動産貸付用のものは除かれます。建物についても、800平米までの部分に限定されています。減価償却資産についても、営業用として自動車税・軽自動車税の課税対象となっているか、固定資産税の対象となっているものに限定されており、微妙に中途半端な取り扱いです。

 猶予税額の免除については、死亡まで事業を継続するか、次の代に納税猶予制度を利用して引き継いだ場合と、法人版事業承継税制と概ね同じパターンとなっています。

 特別な取り扱いとしては、納税猶予を受けた経営者が事業用資産を現物出資することにより法人成りした場合に、納税猶予を継続して、法人の事業承継税制につながることができるようになっている点です。

◆小規模宅地などとの兼ね合い

 この制度で最初に感じたのが、土地について貸付事業を除く400平米までという点で、事業用の小規模宅地を意識した制度になっている点です。100%納税猶予で、土地以外の事業用資産も適用になるので、有利になる場合もありますが、微妙さを感じます。小規模宅地を利用した場合は80%の評価減ですが、相続税の総額が小さくなりますので、他の相続人も有利になります。また、小規模宅地は評価減して完結しますが、納税猶予制度は猶予税額が免除されるまで、事業を継続する必要があり、3年に一度の届出がありということで、メンテナンスが必要です。また、土地以外の事業用資産について、納税猶予の対象となっている部分は目新しいですが、相続税の申告をしていて、土地・同族会社株式が負担として重いと感じることはありますが、建物や事業用資産の負担が重いと感じることはありません。

 どんな人が使うのかを考えると、土地と診療所・医療用機械を保有する開業医の方くらいしか、思いつきません。個人の開業医の方にとっては、選択肢が増えたという意味では有用だと思います。一方で、弁護士など、稼いでいそうな個人事業者がいると思われる業種でも、事業用の土地・建物が相続財産として負担なのかと言われると、現実味がありません。その意味では、適用対象となるケースは思いがけず狭いのかなと感じます。

 もっとも、法人向けの事業承継税制も、制定当時は使いにくい制度でしたが、時間をかけ良い制度に昇華しました。その意味では、個人版事業承継税制も、使い勝手が改善されていくことも期待できます。

 いずれにしても、今までは業績がよければ、法人化という動きでしたが、社会保険の負担の重さから個人成りというケースもありますし、オーナーの不動産を賃借している中小法人が多いことを考慮すると、個人成りという今までとは逆の動きのきっかけになるかもしれません。

 

 

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