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2019年01月04日号 (第382)

平成31年度税制改正の全体像

 明けましておめでとうございます。平成31年になりました。最後の平成と思うと、不思議な感じがしますが、昭和を生きた期間より、平成で過ごした期間の方が長いのだと思うと、感慨深いものです。

 さて、今回は、昨年暮れに閣議決定された、税制改正大綱から、平成31年度税制改正の全体像についてご紹介していきます。なお、各論については、次回以降にご紹介していきます。

 

◆消費税率を気にした税制

 平成31年度税制改正大綱の全体的なイメージは地味だなというのが第一印象です。

 消費税率引上げの影響で景気が悪くなることを非常に気にしているような雰囲気です。住宅や車など高額な資産については、消費税率引上げ後に購入しても、ローン減税が余分に受けられるとか、車に対する税負担を軽減するなどの対応で、税率引上げ後の景気対策に重点をおいたものとなっています。

 また、大きな増税の改正がない点も、消費税率引上げと同じタイミングで増税を避けるような配慮と考えられます。

◆法人税関係

 法人税関係では、試験研究費税制については控除率を見直した点が変更点となります。

 中小企業向け税制では、中小企業者等の軽減税率の特例、中小企業投資促進税制は、2年間延長の取扱い、中小企業者が経営改善設備等を取得した場合の特別償却や税額控除についても、認定支援機関の確認を要件に加えて2年延長ということで、ほぼ現状維持という流れです。

 地方税の話題ですが、事業税率が見直される改正事項が入っています。事業税が「事業税」と「特別法人事業税」に枝分かれして、地方公共団体側での分配のルールが変更になります。ただし、納税者視点では、トータルの税負担は変わらないような仕組みとなっています。

◆所得税・住民税関係

 所得税関係は、消費税率引上げ後に住宅を取得した場合に、住宅の価格の2%部分を、住宅取得後11年目~13年目の3年間で分割して税額控除できる仕組みを設けました。消費税率引上げ分が、還元される仕組みです。

 老人ホームに入っていている状態で相続が発生した場合にも、空き家の3,000万円控除が利用できることになります。介護が必要になり、老人ホームへ入居はやむを得ない状況なので、この制度が利用できるのは、非常に現実的な改正です。

 ふるさと納税については、寄付先が指定されることになります。例えば、返礼割合が割以下で返礼品を地場産品にしているなどのルールを守っている自治体を指定して、指定した自治体への寄付のみがふるさと納税の対象となる仕組みとなります。

 税制改正大綱が公表される直前にシングルマザーに対する税制の議論がマスコミ報道されたましたが、一定の場合に住民税が非課税となる制度となりました。ただし、国税については変更がありませんでした。

◆相続税・贈与税関係

 相続税及び贈与税で、個人事業者向けの事業承継税制が制定された点は、今年の改正の中では目立つ項目です。法人向けの事業承継税制と同様で10年限定、100%の納税猶予制度です。ただ、事業用小規模宅地は80%引きで評価する制度がありますので、後腐れがない小規模宅地と、長期間に及ぶ管理が必要な納税猶予との比較では、小規模宅地の方が魅力的に感じます。利用されるのは、個人のクリニックなど、かなり限定的なように感じます。

 相続税関係では、事業用の小規模宅地に関して、規制がかかりそうな噂がありましたが、今回は規制がかかりませんでした。やはり、消費税率引上げの前後に地価の下落が起きることへの配慮のように感じます。

 教育資金贈与・結婚子育て資金贈与については、受贈者の前年の合計所得金額が1,000万円を超える場合には適用がないことになりました。また、教育資金贈与については、受贈者が24歳以上の場合などで、死亡の前3年以内の贈与の場合は、相続税の計算に組み込まれるなどの規制が設けられました。

 

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