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2018年07月02日号 (第364)

ポイントを付与した場合の収益の計上と消費税の処理

 みなさん、こんにちは、今年も半分過ぎてしまいました。ちなみに、税務署は7月10日で異動を迎えます。例年、通常の税務調査については6月までにけりを付けて、7月の異動以後納税者に連絡を取り、新たな年度の調査を迎えるというような動きになります。最近は少し前倒しで、異動前にアポイントの調整を行い、早い段階から税務調査に着手する傾向があります。

 さて、今回は、国税庁が5月に公表した収益の認識に関する取扱で、ポイント等を付与した場合についてご紹介していきます。

◆ポイントの取扱い

 最近は、コンビニで買い物をしても、喫茶店を利用しても、家電量販店で買い物をしても、ネットで買い物をしてもポイントが付きます。少し古くからあるものとしては、マイレージなどが馴染み深いでしょうか。

 ポイントの会計処理については、発行する会社ごとに微妙にルールが異なるので、画一的な取扱を示すことは難しいという問題がありました。さらに、自社で発行して自社の商品の販売にだけ利用できる売上値引き型のものと、提携企業で使える電子マネー的な性格のものなど、ポイントといっても多様な意味合いを持っていました。

◆法人税法上のポイントの取扱

 国税庁の資料の事例では、商品10,000円に対して、ポイント1,000円分付与し、100%消化される場合について紹介しています。まずは、仕訳ですが下記のように会計処理が変更されるとのことです。

 従来の方法では、最初の段階から総額で売上を計上して、1,000円の費用を計上することで、結果として9,000円が利益でしたが、新基準では10,000円に100/110を乗じて9,090円が利益になり、処理の方法だけでなく金額も異なった結果になります。

 新設された法人税基本通達2-1-1の7によれば、下記の要件の全てを満たす場合は、継続適用を条件として、自己発行ポイント部分を前受け扱いとします。

(1)その付与した自己発行ポイント等が当初の資産の販売等の契約を締結しなければ相手方が受け取れない重要な権利を与えるものであること

(2)その付与した自己発行ポイント等が発行年度ごとに区分して管理されていること

(3)法人がその付与した自己発行ポイント等に関する権利につきその有効期限を経過したこと、規約その他の契約で定める違反事項に相手方が抵触したことその他の当該法人の責に帰さないやむを得ない事情があること以外の理由により一方的に失わせることができないことが規約その他の契約において明らかにされていること

(4)次のいずれかの要件を満たすこと
その付与した自己発行ポイント等の呈示があった場合に値引き等をする金額が明らかにされており、 かつ、 将来の資産の販売等に際して、 たとえ1ポイント又は1枚のクーポンの呈示があっても値引き等をすることとされていること
その付与した自己発行ポイント等が当該法人以外の者が運営するポイント等又は自ら運営する他の自己発行ポイント等で、 イに該当するものと所定の交換比率により交換できることとされていること

 コンピュータで管理するポイントなら、要件は技術的には満たすことは可能です。提携ポイントと交換できる場合でも、新基準が利用可能な点は面白いと思います。

 中小企業で採用するか否かについては、法人税の処理だけをみれば、システムでポイントの管理が可能なら、課税の繰り延べ(節税)になるので、やってもよいかなという雰囲気です。ただ、レジなどのシステムで、うまく数字が拾いきれない場合は難しいように思います。

◆消費税の取扱

 国税庁は、上記会計処理について、消費税の取扱についても公表しています。消費税の取扱では、法人税法上で新基準を採用したとしても、売った段階で10,000円の課税売上、ポイントが行使された場合は、対価の返還等(値引き)とされており、従来どおりの計算が要求されます。

 会計的にポイント分を控除しても、消費税法上は、事実としての10,000円の売上と捉えるようで、法人税と枝分かれの処理になります。法人税と消費税で異なる処理は、中小企業にとっては、事務的に負担となるかもしれません。

 新基準を採用した場合、課税の繰り延べの効果はありますが、タイミングだけの問題で、トータルの期間では有利不利はありません。新会計基準が強制されない中小企業は、会計仕訳と消費税が異なる処理になる事務負担を受け入れるか否かが、選択の判断基準とすべきです。

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