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2018年06月20日号 (第363)

収益認識に関する会計基準への対応(総論)

 みなさん、こんにちは、米朝の会談が終わり、時代の変化があるのかもしれません。会計処理についても、大きく変化しており、収益の認識基準についての会計基準が公表され、収益計上のルールについても見直しが行われています。今回から、国税庁が5月に公表した資料をもとに、中小企業の収益認識に影響がありそうな部分についてご紹介していきます。

◆収益認識に関する会計基準への経緯

 国際会計基準審議会(IASB)と米国財務会計基準審議会(FASB)が共同して、「顧客との契約から生じる収益」という基準を公表し、国際的には2018年1月以降開始事業年度から適用が強制されています。

 日本では企業会計基準委員会(ASBJ)が、上記の国際基準と整合性を採った会計基準を策定し、2018年3月に公表しました。国内では、公認会計士の監査が必要な会社については、2021年4月1日以後開始する事業年度から強制適用、2018年4月以降開始事業年度、あるいは、2018年12月末以後終了事業年度から早期適用が可能とされています。

 それはさておき、中小企業では、どのような対応が必要になるのかが気になるところですが、「引き続き企業会計原則に則った会計処理も可能」とされており、何も変更しなくてもよいという結論です。ただ、昔からの処理も可能ですが、新しい基準を採用することもできるわけです。実務的な視点からは、経営者が経営判断をする上でより役立つのなら新会計基準を採用する、あるいは、税金の計算で有利になる可能性があるのなら検討するという雰囲気ではないでしょうか。

◆通達の改正の概要

 法人税法の条文も変わり、引き渡しの日ではなくて、それと近接する日という概念が登場するのですが、学術的な話は別として、中小企業の実務という観点からは気にする必要はありません。

 法人税基本通達の改正について、国税庁の資料からタイトルを羅列すると以下のようになります。

①収益計上の単位の通則(基本通達2-1-1(1)(2))

②資産の販売等に伴い保証を行った場合の収益の計上の単位(基本通達2-1-1の3)

③ポイント等を付与した場合の収益の計上の単位(基本通達2-1-1の7)

④資産の販売等に係る収益の額に含めないことができる利息相当部分(基本通達2-1-1の8)

⑤資産の引渡しの時の価額等の通則(基本通達2-1-1の10)

⑥変動対価(基本通達2-1-1の11)

⑦相手に支払われる対価(基本通達2-1-1の16)

⑧役務の提供に係る収益の帰属の時期の原則、履行義務が一定の期間にわたり充足されるものに係る収益の額の算定の通則(基本通達2-1-21の2~5)

⑨請負に係る収益の帰属の時期(基本通達2-1-21の7)

⑩知的財産のライセンスの供与に係る収益の帰属の時期(基本通達2-1-30)

⑪知的財産のライセンスの供与に係る売上高等に基づく使用料に係る収益の帰属の時期(基本通達2-1-30の4)

⑫工業所有権等の使用料の帰属の時期(基本通達2-1-30の5)

⑬商品引換券等の発行に係る収益の帰属の時期(基本通達2-1-39)

⑭非行使部分に係る収益の帰属の時期(基本通達2-1-39の2)

⑮返金不要の顧客からの支払の帰属の時期(基本通達2-1-40の2)

⑯返品権付き販売(基本通達9-6-4)

 国税庁が公開した資料のタイトル部分を並べただけでも、盛り沢山ですが、実務では既に存在しているものについて、通達を置き明確化したというようなイメージで、大部分は大きな変化はありません。一部、取扱の幅が広がっています。

 また、すべての内容は、期間帰属の問題ですから、長期的にはどのような方法をとっても有利不利は生じにくいものです。なので、中小企業の場合は、慌てて動く必要性はありません。

 

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