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2018年06月01日号 (第361)
事業承継税制の終わり方(猶予税額の免除と納税猶予の取消)
みなさん、こんにちは、最近のニュースでアメフトの話題が注目されていますが、危機管理の大切さが身に染みます。経営者の方々とお話ししていても、話題として、もっとも頻繁に話しが出てきます。会社でトラブルが発生したときに、どのように対応するか、非常に重要な問題ですね。
さて、今回は、事業承継税制の締めくくりとして、事業承継税制の終わりについて、どうなるのかについてご紹介します。
◆猶予税額が免除される場合
(1) 贈与税の猶予税額の免除 |
①先代経営者が死亡した場合 贈与税の納税猶予は、相続が生じるまでの暫定的な意味合いがあり、基本的な流れは、贈与税の猶予税額が免除される替わりに、相続税の計算に組み込まれることになります。ただし、相続税の計算に組み込まれる際に、相続税の納税猶予に切り替える事が、事業承継税制自体で予定されており、多くの納税者もその前提で、贈与税の納税猶予を利用することになります。 ②後継者が死亡した場合 事業承継税制により株式の贈与を受けていた後継者が死亡した場合は、猶予されていた贈与税が免除されます。ただし、後継者の死亡により、その保有していた株式について、相続税が課税される可能性があります。この段階で、要件を満たせば、相続した経営者が新たに事業承継税制を適用することが可能です。 ③後継者がさらにその次の後継者へ贈与した場合 事業承継税制により贈与税の納税猶予を受けていた後継者が、さらに、その次の後継者へ株式の贈与を行い、事業承継税制を適用した場合は、猶予されていた税額が免除されます。 |
(2)相続税の猶予税額の免除 |
①事業承継された相続人が死亡した場合 事業承継税制を利用した相続人が死亡した場合は、納税猶予されていた相続税は免除されます。その段階で、事業承継税制の要件を満たせば、次の後継者が納税猶予を受けることが可能です。 ②事業承継された相続人が、次世代後継者へ事業承継税制による贈与をした場合 事業承継税制を利用した相続人が、さらに次の世代の後継者へ、事業承継税制により株式を一括贈与した場合は、猶予されていた相続税が免除されます。 |
上記のように、事業承継税制は、さらに次の後継者へ事業承継税制を適用することで、猶予税額が免除される仕組みとなっており、脈々と事業承継が可能な制度設計になっています。
◆納税猶予が取り消されたらどうなるのか
前回、納税猶予の取消事由についてご紹介しましたが、納税猶予が取り消された場合は、基本的には、猶予されていた税額と利子税を合わせて納付することになります。納税猶予期間が5年を超える場合には、経営承継期間である5年分の利子税は免除されます。
また、利子税の税率は金利の情勢によって変わりますが、平成30年であれば、0.7%となっています。ただし、長年にわたり納税猶予を利用するので、長期間に及ぶことで利子税はかさんでいきますし、金利の情勢次第では跳ね上がる可能性もあります。もともと、相続税や贈与税が払えないほど高いことを理由に納税猶予制度を利用するわけですから、金利が低いからと安心してはいけません。
実務的な視点では、ミスにより納税猶予が取り消される場合は、負担として重いものになりますが、例えば上場した場合、株式交換によって子会社になるような場合は、猶予税額を支払ってもお釣りが生じるようなケースでしょうから不利な状況ではありません。
また、経営環境の悪化で株価が下落しているような場合は、猶予税額を再計算して、一部猶予税額が免除される仕組みになっており、業績が悪くなった場合にM&Aで救済してもらうようなケースでも大きな不利益は生じないような制度設計になっています。
それ以外には、継続して税務署への届出などが負担で、敢えて納税猶予を打ち切る場合など想定されますが、ミス以外では不条理な状況は起こりにくく使いやすい制度になっています。
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