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2018年05月01日号 (第358)

事業承継税制の先代経営者と後継者の要件

 みなさん、こんにちは、ゴールデンウイークいかがお過ごしでしょうか。今年は気候がよいように感じ、過ごしやすいなと思っています。

 さて、今回は事業承継税制の改正で、先代経営者と後継者の要件について説明します。1人から1人への事業承継税制だったものが、複数から複数への贈与が事業承継税制の対象となった点が注目すべき点です。

◆先代経営者の要件

 改正された事業承継税制で、特例贈与者・特例被相続人の要件は、下記の通りです。
① 都道県知事の確認を受けた特例代表者であったこと
② 贈与・相続直前まで、先代経営者グループで過半数の議決権を有し、
グループの中で後継者を除いたところで筆頭株主であること 

 贈与税の納税猶予の場合には、さらに下記の要件が加わります。
③ 贈与時までに代表者を退任すること
④ 贈与時に保有する株式について、議決権の3分の2に達するまでの部分を、一括して贈与すること

 今年の改正では、複数の後継者への事業承継が可能になっている点に特長があります。後継者を複数とする場合は、各後継者の議決権割合が贈与後に10%以上になっていることが必要で、贈与後に承継者の議決権割合が、贈与者の議決権割合を上回っている必要があります。なお、3名の後継者までが事業承継税制の対象となります。

◆後継者の要件

 後継者の要件としては下記のとおりです。

① 都道府県知事の確認を受けた特例後継者であること
② 贈与・相続後に後継者グループで過半数の議決権を有しており、
後継者グループの中で筆頭株主であること
③ 贈与時において、会社の代表者であること
(相続の場合は、5ヶ月を経過するまでに代表者であること)
④ 贈与・相続後、申告期限まで株式を保有し続けること

 後継者が複数の場合に、グループの中で筆頭株主という要件がありますが、3人が同数の株式を保有する必要はなく、上位3名が後継者という形であれば要件を満たします。

 贈与の場合は、贈与時に後継者が20歳以上で、3年以上継続して役員であることが要件となります。特例制度は10年で終わることが予定されているので、8年目からの役員就任では手遅れとなる点は注意が必要です。

 相続税の納税猶予の場合は、被相続人が60歳以上の場合は、相続直前に後継者が役員であることが要件となります。中小企業で60歳の経営者は、普通の現役という感じで、後継者が役員に就任していないことも多くあります。急な相続の発生の場合には、後継者が役員でなかったことで、事業承継税制が利用出来ないというリスクも生じます。

 事業承継税制は、贈与を使って次世代にバトンタッチすることを推奨する制度です。不慮の出来事が生じた場合は、うまく機能しない点に要注意です。相続まで待つのではなく、贈与してバトンタッチというプランで考えていくべきです。

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