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2018年03月20日号 (第354)

一般社団法人及び一般財団法人に対する相続税・贈与税の課税

 みなさん、こんにちは、確定申告の期限も終わり、季節はすっかり春になりました。花粉の季節ですが、薬や治療法の多様化で症状が緩和されたという方をよくみかけます。自分が子供の頃には、花粉症という言葉すらなかったことを考えると時の流れの不思議さを感じます。

 さて、今回は平成30年度税制改正で、一般社団法人及び一般財団法人に対する相続税、贈与税の課税に関する取扱いです。

◆持分のない法人

 株式会社や有限会社は、会社の財産は株主の財産であると考えることが可能です。なぜなら、会社が解散した場合に、残っている財産を、株式の保有割合や出資割合で分配する仕組みとなっているからです。

 一方で、NPO法人、一般社団法人、一般財団法人などは、持分がない法人として位置づけられます。事実上は、出資者のような人がいたとしても、法律上は、出資者は存在せず、法人を解散した際に、払い戻す対象がいない法人という扱いになっています。つまり、法人の経営を行っていて、法人の財産を自由に使うことができたとしても、法人の財産について持分はないので、相続税の対象にならないという問題が生じます。

 NPO法人は、最低でも10人の社員が必要であり、監督官庁への事業報告など、私物化することが難しい仕組みです。一方で、一般社団法人であれば、夫婦二人で設立して、収益事業を行っていない場合は、税務署への申告すら不要であるなど、自由に使えるメリットがありました。最近は、一般社団法人や一般財団法人を活用した相続税対策なども行われていたような背景があります。

◆課税の仕組み

 持分がない法人、つまり持ち主がいないのにどのように課税するのかという問題があります。平成30年度税制改正で導入される内容は、以下の通りです。

(1)特定一般社団法人等
 対象となるのは、全ての一般社団法人・一般財団法人ではなく、次の要件を満たす場合で、要件を満たす法人を、特定一般社団法人等と呼びます。

 ① 相続開始の直前における同族役員数の割合が、総役員数の過半数であること
 ② 相続開始前5年以内に、同族役員の割合が総役員数の過半数である状態の期間の合計が3年以上であること

(2)相続税が課税される金額
 特定一般社団法人等の純資産額を同族役員の数で除して、計算した金額について、課税対象となります。持分がないので、単純に同族役員で頭割りの計算になります。また、他人をいれて、金額を小さくすることができないように、同族役員数で除すとしています。

(3)課税の仕組み
 特定一般社団法人等の理事である者(5年以内に理事であった者を含む)が、死亡した場合に、上記の相続税の課税の対象とされる額について、特定一般社団法人が被相続人から遺贈により取得したものとみなして相続税が課税されます。

 なお、特定一般社団法人等が、贈与により取得した財産について贈与税が課税されている場合には、その贈与税額を控除します。

(4)適用開始時期
 平成30年4月1日以後の特定一般社団法人等の理事の死亡に関する相続税について適用されます。ただし、それ以前に設立された一般社団法人等については、平成33年4月1日以後の理事の死亡からの適用とされます。

◆ふさがれた抜け道

 一般社団法人等を使って、相続税が課税されない財産を作り出す手法は、画期的で、相続税対策としては、大きな効果が期待されていました。実際に、そのような相続税対策を、始めていた事例もあったようです。ところが、今回の改正で、相続税が課税されるようになり、さらに2割加算ですから、節税どころか余分に納税するスキームに変化してしまいました。

 事業承継税制のように、税負担を軽減することを趣旨とした制度であれば、税負担が軽くなることは予定調和です。一方で、一般社団法人を活用した相続税負担の軽減は抜け道のようなもので、ふさがれるべくしてふさがれたという雰囲気です。

 

  相続税対策は、結果が出るのがずいぶん先ですので、長期的に安全で確実な方法を選択すべきです。次回は、平成30年度税制改正の目玉とも言える、長期的に安全で確実な事業承継税制の改正についてご紹介していきます。

 

 

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