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2017年11月20日号 (第342)

年末調整に関する注意点

 みなさん、こんにちは、今年も1ヶ月と少しだけです。会社経営者の方にとっては、かき入れ時であると同時に、賞与の支払いや、年末調整と、何かとばたばたしがちな季節になります。

 今回は、年末調整業務に関する注意点をご紹介していきます。

◆給与所得控除後の給与所得

 平成29年分より、給与収入1,000万円超の場合、給与所得控除額が220万円で打ち止めとなりました。平成24年以前は、給与所得控除は給与収入が増加するにつれて、増加し続ける仕組みでしたが、平成25年からは1,500万円で打ち止め、平成28年分は1,200万円で打ち止めと徐々に給与所得控除の上限額を小さくしてきました。

 最新の給与計算ソフトや年末調整のシステムを利用している場合は、間違いは起きないと思われますが、昨年以前のシステムだと給与所得控除後の計算が誤って計算されます。また、エクセルなどを利用して、自分で計算式を作成して年末調整を行っている場合などにも注意が必要です。

 

◆扶養控除等申告書について

 年末調整時期に扶養控除等申告書の記載を従業員にお願いすることになりますが、例えば平成29年の年末調整を行う際に、昨年に提出された扶養控除等申告書に訂正があれば訂正をしてもらうと同時に、平成30年1月からの源泉徴収に備えて、平成30年分の扶養控除等申告書の記載をしてもらうことになるはずです。

 扶養控除等申告書の提出がない場合には、給与に対する源泉徴収額を計算する際に「乙欄」という源泉徴収税額表が適用になります。扶養控除等申告書の提出がある場合に適用される「甲欄」に比べ、高い源泉徴収税額となるので注意が必要です。なお、2カ所以上から給与を受け取るような場合には、主たる給与の支払先に扶養控除等申告書を提出して「甲欄」適用、主ではない給与については「乙欄」適用となります。

 平成30年1月からの源泉徴収に備えて、従業員の方に、平成30年分の扶養控除等申告書を記載してもらうことになります。平成30年から所得税の改正があり、下記のような変更点があります。

①本人の合計所得金額1,000万円を超える場合は配偶者控除が適用されない。
②配偶者特別控除については、配偶者の合計所得金額123万円まで適用可能。

 

◆源泉控除対象配偶者

 実際に、「平成30年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を見てみると、平成29年分では「A 控除対象配偶者」と記載されていた部分が、「A 源泉控除対象配偶者」という記載に変更になっています。今回初めて、出てくる言葉なので戸惑うかと思います。年末調整の手引きによれば、下記のように説明されています。

あなた(平成30年中の所得の見積額が900万円以下の人に限ります。)と生計を一にする配偶者(青色専従者として給与の支払を受ける人などを除きます。)で平成30年中の所得の見積額が85万円以下の人が源泉控除対象配偶者に該当します。

 「あなた」と言うのは、扶養控除等申告書を記載する本人を差しています。そして、所得の見積額900万円以下に限るとなっていますが、給与収入1,120万円の場合に、給与所得900万円となります。ボーナスがない場合で月額給与93万円程度、ボーナスがあると数字がかなり読みにくくなります。

 さらに、配偶者の所得の見積額が85万円以下となっており、こちらは給与収入150万円までということになります。昨年までは、収入金額で103万円まででしたので、こちらは範囲が広がっています。

 

 正直な話し、扶養控除等申告書を記載する従業員のみなさんが、正しい記載ができるのかについて不安が残ります。見積額ですから、正しく記載しても、実際に異なる結果になることも考えられます。その場合の弊害としては、来年の年末調整の際に、過不足額の金額が大きくなることです。例えば、従来年末調整で還付となっていたのに、不足額が生じ追徴されるということが想定されます。

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