税務最新情報

2017年11月01日号 (第340)

会社で利用する財務会計のしくみ

 みなさん、こんにちは、今年もあと2ヶ月です。12月の中旬には来年度の税制改正大綱が公表される予定ですが、それまでは、税法に関しては新しい話題も少ないので、税務とは切っても切れない中小企業の会計処理についてご紹介していきます。

会計処理の形態

 大きな会社であれば、社内で経理担当者が会計処理を一通り行い、チェックを監査役の監査や会計監査で受けるという形で定型化されています。一方で、中小企業の場合は、会社内で一通り会計処理を行っている会社もあれば、原始資料をまとめて会計事務所に渡して一切合切の処理を依頼しているケースなど、会計処理の形態について幅があります。簡単に分類すると以下のような形態になります。

 長所 短所 
自社完結型 ・迅速に会社の状態を把握できる ・一定のスキルの経理担当者が必要 
一部委託型 ・全部委託に比べコストを抑えることが可能
・経理専用スタッフがいなくても大丈夫
・会計データの完成まで日数を要す 
全部委託型・手間とスキルが不要・コスト面で一部委託より高くなる
・データの完成までより時間がかかる

 従来は、自社で財務会計処理を完結するのは大きな会社だけでした。一方で、小さな会社は全部委託に近いことがよくありました。最近は、パソコンと財務会計ソフトの普及により、小さな会社でも自社完結型の処理をすることが増えたので、会社の規模の大小により形態が変わると言うより、経営者の思惑により会計処理の形態を選択するようになりました。つまり、どのような形を選択するかは、経営者の気持ち次第と言えます。

 会計処理を自社で完結するパターンは、全ての処理を会社内で行うので、一部委託型と全部委託型の会計処理がどのように行われているのかについてご紹介します。

◆全部委託型

 昭和の時代は、パソコンの普及率が低くパソコンを利用する人も少数だったので、財務会計処理は高価なオフコンによって行われていました。よって、中小企業の場合は、会社で現金出納帳や伝票を起票して、それを会計事務所に預けて、会計事務所のオフコンで会計処理という形態でした。あるいは、会計事務所で職員が手計算で試算表から決算書まで作成するという形態でした。

 少数ではありますが、いまだにこの形態のお客さんもいらっしゃいます。社長1人でやっている会社など、人手が足りない場合には、この形態になりがちです。また、会社の経営資源を、売上を伸ばすことに注力したいなどの特別な意図がある場合などもこのような形態になりがちです。

 この形態の場合は、試算表や月次の数字について、原始資料を渡して、早ければ完成次第郵送、そうでない場合は翌月の訪問時にということで、経営者が結果を知るまでに時間がかかる点がデメリットです。また、作業の全部を委託することになるため、一部委託のケースに比べてコスト的なデメリットもあります。

◆一部委託

 会計ソフトを購入して会社で現金出納や預金の出納など、可能な部分を入力して、振替仕訳など一部について会計事務所で補完する形態、あるいは、エクセルなどに現金出納、預金の出納などを入力していただき、それを会計事務所で加工するなどの形態など、かなり幅があります。特に最近は、銀行の出納についてはネットバンキングなどのデータを財務会計ソフトに自動で取り込むことが可能なので、会社側の負担が軽くなりつつあります。

 また、クラウド型の財務会計システムも一般的になっており、クラウド上にあるデータに会社で入力を行い、会計事務所側でチェックや訂正を行うことで、タイムリーに月次の数字を経営者が把握することが可能になりました。クラウド型の財務会計システムのメリットとして、端末を選ばないという点があります。ウインドウズやマックから入力できるのは当然として、タブレットから確認作業が可能であるとか、従来に比べて多様な使い方が可能です。クラウド型の財務会計の欠点としては、操作スピードに関しては少し難があります。ただ、ネットバンキングやクレジットカードの利用明細など、ネット上のデータとの連携がスムーズなので、入力作業自体は減るのでそれほど苦にならないかもしれません。

 今後を見据えても、中小企業では、経理専属のスタッフを雇用するのは難しく、一部委託型になると思います。その中でも、大きめの会社は自社完結に近い形で、小規模な会社はクラウドの利用など枝分かれする形になっていくと思われます。

 次回は、会計事務所と経理業務についてどのように分担するかについてご紹介していきます。

記事提供
メールでのお問い合わせの際は、必ず住所、氏名、電話番号を明記してください。

過去の記事一覧

ページの先頭へ